【宮本恒靖の目】W杯を勝ち抜くことの難しさ 今大会で見られる他国の進化と日本の現実

今の日本にはW杯に“出続けること”が必要

 コロンビアのホセ・ペケルマン監督は後半開始から10番のMFハメス・ロドリゲスと5番のMFカルロス・カルボネロを入れてきました。前半のコロンビアは20番のFWファン・キンテロが強引に仕掛けて、ミスによって簡単にボールを失う場面が目立ちました。コロンビアに攻められたとしても、早い段階でボールを回収できていたので、日本の攻撃陣はそこまで下がる必要がありませんでした。

 でも、後半になってハメス・ロドリゲスを軸にボールをポゼッションする意識が高まったことで、日本は前線の選手が自陣まで戻らなければいけなくなってしまいました。これによりゴールへの距離が遠くなり、日本のプレーゾーンが低くなってしまった。その中でコロンビアの2点目が決まり、無理をしてでも攻めなければいけなくなって、ゲームのバランスが崩れてしまいました。

 コロンビアは前半と後半ではレベルの違うチームになりました。前半はジャクソン・マルティネスやアドリアン・ラモスが前線でボールをもらえず孤立していたのですが、ハメス・ロドリゲスが“コネクター”としてボールを供給することで、彼らの攻撃力も活きました。日本がリスクをかけて攻めに出ざるを得なくなった中で、あえて下がらずに高い位置に残ってカウンターを仕掛る“したたかさもさすがでした。

 日本では1分2敗でグループリーグ敗退という結果に批判も起こっているそうです。もちろん結果が出なかったわけですから、そうした声が出るのは当然です。ただ、個人的に言いたいのは「W杯はそんな簡単なものじゃない」ということ。現在の日本の実力で言えば、W杯で優勝するのは現実的ではありません。それにも関わらず、必要以上に期待し過ぎたのではないでしょうか。

 今回、FIFAのテクニカルスタディグループの一員として各国の試合を見ていますが、日本が4年間積み上げてきたように、他の国も4年間で進化、変化していることを感じさせられます。

 忘れてはならないのは、日本はまだW杯に5回しか出たことがないということ。今回のような経験をまだまだ積み重ねていかなければいけません。そのためにはW杯に“出続けること”が必要です。日本サッカーに関わる全ての人が、今日からまた自分にできることをやっていくことが大事になると思います。

※宮本恒靖特別編集長による「日本代表分析」は7月24日発売のサッカーマガジンZONEでも掲載予定です。

【了】

宮本恒靖(Soccer Magazine ZONE特別編集長)●解説

※ワールドカップ期間中、記事内で扱うシーンの一部はFIFAワールドカップ公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』のマルチアングル動画、選手毎のスタッツデータで確認できます。
詳しくは、「LEGENDS STADIUM 2014 – FIFAワールドカップ公式動画」まで

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