“無敵艦隊”が散った要因は「プレースタイル」ではなく「選手選考」にあり スペインのパスサッカーは終わらない
スペインのハイレベルなパスサッカーは次世代にも受け継がれている
「チーム全体として、特に前線の選手のポジション取りの連続性が欠けていたと思います。パスコースを作り続ける連動性が乏しいため、ボランチがボールを保持しながら考える時間が増え、結果的にそこを狙われた形となりました。また、前線からハイプレッシャーを掛けられた際の対応策が練られていたかどうかが疑わしくなるくらい、チリのハイプレッシャーにドタバタしていたのが印象的。対戦相手がスペインのサッカーを研究し尽くしてくることに対して、スペインは鈍感だったのかもしれません」
今回の結果は何を意味するのか。バルセロナが絶対的な強さを見せられなくなったことと関連づけて、「スペインサッカーの時代が終わった」という声もある。スペインの代名詞ともいえるポゼッションスタイルも変化を迫られるのだろうか。村松氏は「それはないでしょう」と断言する。
「今回の結果を受けてスペインのプレースタイルが変わることはないと思います。オリンピック代表を始め、下の代表でもパスサッカーがハイレベルで表現されていますし、パスサッカー向きの選手が育ってきているので、今後もスペインはパスサッカーを貫き通すことでしょう。もちろん、時代の流れを考慮し、マイナーチェンジは必要でしょうが」
村松氏はスペインの“復活”は決して遠くはないと見ている。
「今回の最大の敗因は、プレースタイルではなく、選手選考にあったと思います。つまり、世代交代を先送りにしてしまった選手選考が裏目に出た形です。もちろん、ビセンテ・デル・ボスケ監督はこのメンバーでも勝てると思っていたから選出したのでしょうが、結果論から言うと、ハングリー精神と運動量が欠けている代表でした。スペインは若い世代もたくさん素晴らしい才能が出てきています。ファン・マタ、コケ、ハビ・マルティネス、チアゴ・アルカンタラ、ムニアイン、イスコ、デ・ヘア……。今回の敗退を機に世代交代がおこなわれ、新生スペインがまた世界のサッカーに衝撃を与えてくれることを期待しています」
村松尚登(むらまつ・なおと)
1973年生まれ、千葉県出身。96年、指導者の勉強のためにスペインに渡る。バルセロナを拠点に8クラブのユース年代以下の指導に携わり、2004年スペインサッカー協会が発行する上級コーチングライセンスを取得。06年からFCバルセロナスクールにて12歳以下の子どもたちを指導。その後、帰国して2009年9月よりFCバルセロナスクール福岡校で指導を開始。2013年度から水戸ホーリーホックジュニアユースコーチに就任した。成美堂出版より監修を務めた「最速上達オフ・ザ・ボール」が発売中。
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北健一郎●文 text by Kenichiro Kita
※ワールドカップ期間中、記事内で扱うシーンの一部はFIFAワールドカップ公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』のマルチアングル動画、選手毎のスタッツデータで確認できます。
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