コロンビアでバルデラマと“共演”した日本人DF 中南米を渡り歩いた波瀾万丈のキャリア
コロンビア複数チームの練習に参加も契約に至らず 現地で直面した恐怖体験
そして山中が4カ国目に選んだのが、南米のコロンビアだった。所属先を求め、1年近く行き場を探した。だが1部、2部の複数チームの練習に参加したが、正式契約までこぎつけることはできず。18年限りでの現役引退という道を選んだ。
2部のコルトゥルアでは契約直前までこぎつけながら、チームの下部組織の左サイドバックの選手がU-20コロンビア代表に選ばれたことで、その選手をトップに上げて鍛えるチーム方針に変わり、同じ左サイドバックとして練習に参加していた山中の入団は一転白紙に。月3000〜4000ドル(約33万円〜44万円)と言われていたサラリーが目前で消えた。隣国ベネズエラの2部チームに入れるチャンスもあったが、政情不安で危険度が非常に高く、現地にたどり着く前に身ぐるみ剥がされる可能性もあったため、断念した。
またコロンビアでは、改めて南米の危険さを知ることにもなったという。首都ボゴタでは、目の前を歩くスーツ姿の男性がいきなり拳銃で撃たれて死亡する事件に遭遇。コロンビア第3の街カリでは、練習参加していたチームの練習場がマフィアが牛耳る危険エリアのど真ん中で、隣にマフィアの事務所があり、危険を感じて代理人に頼み、チームを変えてもらったこともあった。かつて同じチームで一緒に練習していた選手が、拳銃で撃たれて殺されるという訃報を耳にしたこともあった。いろんな意味で濃い1年間だった。
「26歳なのでフィジカル的にはまだやれますが、1年間チームに所属してプレーしていないと実戦感覚も鈍るし、これまでと同じプレーをするのが難しくなる。欧州やアジア、日本も考えたけど、興味が湧かなかった。中南米のサッカーにこだわりがあったんです。それで、セカンドキャリアのことも考え、現役を引退することに決めました。中南米に挑戦したことでいろんな国の人と知り合うことができたし、心残りはありません」
結局コロンビアでは、どのチームとも契約に至ることはなかったが、1部の強豪ジュニオールから練習参加の連絡を待っていたバランキージャでは、予想もしなかった幸運が転がり込んだという。
街中のラジオ局の前を通りかかった時のこと。生放送中のDJから「そこの東洋人。何をしているんだ?」と話しかけられた山中は事情を説明すると、その場で急きょ番組出演が決定。さらに、元コロンビア代表MFカルロス・バルデラマが好きで会えたら最高だと答えると、バルデラマと親しいプロデューサーがバルデラマに連絡。偶然近くにいたバルデラマが20分後にスタジオまで駆けつけ、共演することに。まさかの対面を果たした山中は「今まで会ったことのない、本当によく喋る人で、1人でマシンガントークを続けていました。あなたは憧れの選手だと言うと喜んでくれました」と声を弾ませる。