「本物のキャプテンはマルディーニとおまえだけ」。ザッケローニ監督と強い信頼関係を築いた長谷部誠

 フランクフルトとの正式契約とメディカルチェックため、本田圭佑と共に日本に帰国せず、チームを離れて欧州に向かった長谷部は、「僕はもう、若い選手がキャプテンになるべきだと思っていて、僕はサポート役でもできるんで。世界的に見ても、若い選手が出てこないといけないと思うし、自分なんかを押しのけてもらわないと困る。まあ、負ける気はないけど。若い選手、というか若い人材には可能性があふれているんで。そういう選手に頑張ってもらわないといけない」と語った。

 1次リーグで1分2敗という現実に直面したコロンビア戦後、悔し涙を流した主将は前を見ていた。長谷部が代表キャプテンに就任したのは、南アフリカW杯の直前。当時の岡田武史監督は、悪い流れが続いていたチームの雰囲気を一変させるカンフル剤の1つとして、キャプテンを横浜F・マリノスの中澤佑二から引き継がせた。

 その前回大会では、中村俊輔や楢﨑正剛という定位置を直前で失ったベテランの後押しを受け、「僕は何もしていない」と語る状況だった。それから4年間キャプテンマークを腕に巻き続けた男は、日本代表の惨敗により、変化の必要性を感じているようだった。

 本田圭佑、香川真司、長友佑都ら欧州のビッグクラブでプレーする後輩が「W杯優勝」を堂々と公言していた。そんな中、所属クラブで出場機会がなくパフォーマンスもみるみる低下していった12年10月の欧州遠征時、アイデンティティー•クライシスに直面した長谷部は、ザッケローニ監督にこんな進言をしたことがあったという。

「監督とはいろんなことがあり、ここでは話せないようなことも話してきた。自分が1回、もう少し若い選手にキャプテンを任せたいと言ったことがあった。そのときはチームでもベンチから外されたりしていて、そういう話をした。そうしたら、監督はそういう気が全くないというか、『今までいろんなチームを率いてきたけど、本物のキャプテンというのは(パオロ・)マルディーニとおまえだけだ』と言われた。監督からの信頼を感じた。この話、しなかったらよかったですね」

 恥ずかしそうに秘話を披露したが、日本サッカー界の“優等生”は、ザッケローニ監督から絶大な信頼を得ていた。昨季移籍したニュルンベルクでは2度にわたって右膝を故障し、チームも降格してしまった。試合勘は失ったものの、コロンビア戦では豊富な運動量と献身性を取り戻していた。主将の座を退いても、日本代表の新体制でも必要な人材であることに異論は少ないだろう。

「スタイルは継続していった方がいいと思っている。W杯で勝てなかったのは試合の入り方。相手は戦い方がしたたかだったし、そういう部分だと思う。まだ日本のサッカーは熟していない」

 長谷部は信頼厚いザックスタイルの継続を強調する。しかし、前回大会では決勝トーナメント1回戦のパラグアイ戦までは、日本代表が巧みな試合運びを見せたことを忘れてはいけないだろう。このスタイルの継続が何をもたらすのか。このスタイルが正しいのか、果たして真のジャパンスタイルだったのか。コロンビア戦後に長谷部が語ったように、最も議論が必要な部分である。

 

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
※ワールドカップ期間中、記事内で扱うシーンの一部はFIFAワールドカップ公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』のマルチアングル動画、選手毎のスタッツデータで確認できます。
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