“バルサ経由”と“地方クラブ育ち” 「大きな未来のある」17歳のJ1対決に見えたもの

カレーラス監督も賛辞を送る松岡、FC東京戦もポジションを変えながらフル出場
前半途中からサガン鳥栖のルイス・カレーラス監督は、新加入のイサック・クエンカに準備を始めさせた。10日に行われたJ1リーグ第3節のFC東京とのアウェー戦、前半をスコアレスで終え「連係が得意なのでトーレス、趙東建とのコンビを期待して」交代出場を予定していたという。2トップとの連係を想定しているのだから、同じ左MFで先発した17歳の松岡大起との交代が妥当だと見る向きが多かったかもしれない。右MFでスタメン出場をしたのは金崎夢生だから、両サイドを比較すればキャリアが違い過ぎる。
だがカレーラス監督がベンチに下げたのは、日本代表歴を持つ金崎のほうだった。さらに鳥栖はクエンカがピッチに立って1分後に、高橋秀人が退場処分になるが、それでも指揮官は17歳をボランチに移行させてピッチに残し、次に打った手はFWの趙に代えてボランチの福田晃斗。結局松岡は左でスタートし、中央、右と二度ポジションを移して90分間のフル出場を果たした。
「彼は大きな未来のある選手で、非常に信頼している。アカデミーがしっかり仕事をしてきた成果で、17歳の若さでトップリーグでプレーをしていることには、帽子を取って敬意を表したいね」
試合後の指揮官は、最大限に称えた。
松岡は熊本のクラブから「コーチの紹介で」鳥栖U-18に加入。これでルヴァンカップも合わせて3試合連続のスタメン出場となった。しかも、FC東京戦で同じサイドで対峙したのが、同年代で自身が「1歩2歩3歩も先を行っている」と意識する久保建英。FC東京の長谷川健太監督が「松岡と高橋義希の2人で警戒をしてきた」と振り返るように、状況に応じて下がって久保を見ながら「左サイドバックのミツくん(三丸拡)と組んで、ボックスの角を取ってクロスを狙う」役割を与えられていた。
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もちろん、カレーラス監督が松岡を90分間使い切ったのは、期待値が高いのと同時に、攻守ともに効果的なプレーを継続できていたからだ。
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加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。