あるデータが導く真実 ハリルJが世界を驚かしたラグビー日本代表から学ぶべきこと

ラグビー代表が示したヒント

 この「?」はオフサイドなどではなく、接触プレーのファウルの数だ。日本は圧倒していた最初の2試合で相手よりも多くのファウルを犯していたことが分かる。アフガニスタン戦、シリア戦では相手が日本の攻撃を止めるためやむを得ずという面もあったかもしれないが、日本にとってはこのデータが示すほどの危険な場面は自分たちのミス以外では起きていなかった。

 話を少しだけ現時点で最もホットなスポーツの話題に振ってみたい。11日の早朝に決勝トーナメント進出を懸けたアメリカ戦を控えたラグビー日本代表の話だ。ラグビーは、ピッチの上で肉体と肉体が激しくぶつかり合う競技だ。サッカー以上にフィジカルコンタクトが多い中でも、日本代表は体格に劣る日本人がいかにして世界と伍して戦うかを考え抜いて徹底してる。エディー・ジョーンズ監督を支えているのは、データに裏付けされたサイエンスだ。

 例えば日本の国内リーグでは1分間に60mの移動距離だったが、国際試合ではそれが85mだったことが分かった。これは距離という物理的なものだけでなくその時間、その距離で行っているアクションそのものとそれを判断するスピード、つまり質的にも大きな差があることを示す。それが、国際試合での「スピード感」の違いを生んでいたことが分かった。そうした世界を見て自分たちの現在地を把握し、一歩一歩その差を縮めていったのが今のエディージャパンの姿だ。

 そして試合に勝つ可能性を高めるために徹底的に「レフェリー」の分析を行った。

 ラグビーにおけるファウルは、攻撃機会を失うばかりか、直接失点につながったり、選手が一時的に退場したりと、試合そのものを左右する可能性があるので非常に重要な「分析項目」だ。審判はどのようなファウルを多くとる傾向があるのか、走力はどの位でプレーをどの位置で見る傾向が強いのか、選手からのクレームに対してどのような対応をするのか。さらにそれらの背景として、そのレフェリーの前職さえも対象となる。教師か、警察官かまで調べ上げて職業別にジャッジの傾向を分析する。

 そうした細やかな労力は奇跡を起こす要因となった。日本代表と、南アフリカの試合のペナルティーの数は、日本の8に対して南アフリカが12、得点差において圧勝したサモアとの試合ではサモアの19に対して日本はわずか4だった。

 日本の認定トライ、度重なるペナルティーのジャッジで冷静さを失っていく南アフリカやサモアの様子は、映像を通してもひしひしと伝わってきたはずだ。次のアメリカ戦でどのような分析を元に戦いを仕掛けるのかは、日本の国民が楽しみにしていることだろう。

 

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