あるデータが導く真実 ハリルJが世界を驚かしたラグビー日本代表から学ぶべきこと
シリア戦での変化
シリア戦のデータもパスだけを見れば、それほど特別な違いは感じないが、それ以外のデータを見ると少し特殊であることに気が付く。シュート数が日本の13本に対してシリアは10本、ペナルティーエリア(PA)へ入るためのパスは日本34本に対して25本とこれまでの対戦相手と比較してその差が圧倒的に少ない。何本のパスでシュートに結び付いたかという指標を示すパスの効率性に至ってはシリアの方が高くなっている。シリアは、枠内シュート数が0本なのでゴールの匂いはしなかったが、これがW杯に出場する欧州、南米の強国だったら結果は違っていただろう。
一方、日本のPAへ侵入するためのパス数は、これまでの試合と比較すると、かなり減少していた。だが、成功率は高まっている。それによっていったい何が起きたのだろうか?
当たり前のことだがPA内からのシュートが増え、枠内のシュート率も高まったのだ。
<図1>
これまでは、ポゼッションサッカーの名の下に、パスを回すものの、なかなかPA内に侵入できずにいた。中を固められているからという理由で単にサイドからPA内にボールを放り込む攻撃も多かった。しかし、シンガポール戦、カンボジア戦でいくら相手を圧倒し、いくらたくさんのクロスを放り込もうが、高さと強さをストロングポイントにしたFWがいない日本では得点に直結していなかった。アフガニスタン戦ではクロスの数が、それまでの約半分になり、シリア戦ではさらに少なくなった。中央を固められてサイドを起点にする意味合いをサイドから放り込むのではなく、文字通りサイドを起点としてPAに侵入する形に切り替えたことが分かる。
これらのデータから少しずつだが日本代表の進歩が見て取れる。もう一度、表1に目を移し、一番下の段にある「?」の項目を見てもらいたい。この項目は、数あるデータの中で力に差がある2チーム間で比較的差がない項目となっている。カンボジア戦では日本に対してカンボジアは1だが、実はこれも意味がある数字なのだ。