苦しむレアルは“明日のバルサ”? 低調なクラシコ、過渡期に喘ぐ二大巨頭の姿

バルサFWデンベレ【写真:Getty Images】
バルサFWデンベレ【写真:Getty Images】

勝負を分けた“一度だけ”マークを外したデンベレの突破

 一方、レアルの強みも左サイド、こちらはヴィニシウスの個人技だ。バルサが右MFにセルジ・ロベルトを配置したのは、ヴィニシウスをマークするネルソン・セメドを助けるためなのだろうが、前半はそこまで引いておらずヴィニシウスにチャンスを作られていた。それぞれ左サイドの攻撃が強い同士、対策を取ったレアルのほうに分がある印象だった。しかし、これも結果に影響していない。

 結局、試合を決めたのはディテールだった。

 一度だけカルバハルのマークを外したデンベレにジョルディ・アルバからパスが通って左サイドを破り、デンベレのプルバックをスアレスが決めてバルサが先制している。バルサの左攻めを警戒し、よく抑えていたにもかかわらず、レアルは1回の突破から失点を許してしまった。

 レアルはヴィニシウスを中心に反撃するが、バルサもカウンターを仕掛ける。打ち合いになると、ヴィニシウス単独のレアルに対して、バルサには1対1で優位性のある選手がメッシとデンベレの2人がいる。そこでレアルはルーカス・バスケスをギャレス・ベイルに交代するが、その直後に右サイドに回ったデンベレのクロスからオウンゴール。バルサのパス回しに食いつきすぎて、デンベレに右サイドのハーフスペースに走り込まれてしまった。

 ホームで0-2(2戦合計1-3)となって、レアルは決勝進出のためには3ゴールが必要に。まだ20分間残っていたが集中力を欠いてしまう。バルサがカウンターを仕掛けて2対2の状況にすると、カゼミーロがあっさりとスアレスにファウルしてPKを献上し、これを決められ3点目。あとは週末の3日に行われるリーガ・エスパニョーラ第26節のクラシコに備えるような選手交代と時間を消費するだけの展開で終了となった。

 劇的な展開、戦術的な革新、プライドの激突など、見どころが多いはずのクラシコだが、今回は特に何も大きな出来事は起きず、このカードにしては低調だったと言わざるをえない。

[ftp_del]
>>【PR】UEFAチャンピオンズリーグ&ヨーロッパリーグの「大会情報・日程・視聴方法」をチェック!
[/ftp_del]

西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング