「もっといける」 35歳MF長谷部、リベロ&ボランチの併用に適応する“アジャスト力”
リベロとして奮闘した前半戦から直近2試合はボランチ起用 地元紙は“及第点”評価
「前半はロングボールが多すぎたので、後半『もっとサッカーをしよう』と話をして。自分も後ろでできるだけボールを触りながら、組み立てながらというのを考えながらやった。そのへんの違いはあるかなと思いますね」
長谷部が振り返るように、確かに後半は長谷部のところでボールが落ち着く時間が増えた。
長谷部のプレーは一見、目立つものが少ない。だが、それは必要とされるプレーを正確に、連続で繰り返しているからそう見える。ボールをもらう、止める、運ぶ、送る――。そのタイミングとスピードが丁度いいのだ。傑出したスピードがあるわけではないが、常に動きながらポジショニングと体の向きを正確に調整。慌てて動き出すことが少なく、準備ができているので有利な状況で攻守に働きかけることができる。
だがそれは裏を返せば、準備ができていないと、あるいは準備ができる状態にチームがないと苦戦してしまうということでもある。ハノーファー戦の前半がまさにそうだった。ドイツ地元紙「フランクフルター・ノイエプレッセ」は長谷部を「及第点」と評価。「すべてオッケーだが、このポジションではそこまで際立ってはいない。DFでフリーマンとしてプレーしている時ほど中盤では輝けていない」と分析したが、この試合に限っては悪い流れに巻き込まれてしまったという見方が当たりだろう。
長谷部本人もそのあたりは自覚している。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。