ハノーファー浅野拓磨が“切り札”であるべき理由 覚醒に必要な改善点とは?
「クロスは僕の得意としていないプレーなので、もっと(質を)上げていかないと」
そのための一人は、浅野でなければならない。後半22分、象徴的なシーンがあった。縦パスから右サイドを上手くフリーで抜け出したが、センタリングのタイミングを計っているうちにスピードが落ち、足が止まったところで最終的にはフランクフルトMFセバスティアン・ローデの好タックルによってクリアされてしまった。
最初のコントロールで縦ではなく、ローデと交差するように斜め前に持ち出してゴール方向へと向かえていたら、あるいは迷うことなくドリブル勝負を仕掛けていたら、また別の可能性を作り出せていたかもしれない。
浅野は自分のプレーについて、次のように反省している。
「クロスは僕の得意としていないプレーなので、もっともっと(質を)上げていかないといけない。今日のプレーでも何度か、サイドから崩していって、クロスを上げるのか上げないのかっていうところまでは行けているんです。シュートまで行くのはああいう位置からでは難しいと思いますけど、どうにか味方のシュートにつなげられるような仕事はしなければいけない」
クロスにおけるクオリティーとは、キックの質だけではない。パスを入れるタイミング、パスを送るコースを知り、ドリブルとの使い分けで相手との駆け引きで優位に立てなければならない。そして、それこそがドル監督から求められているプレーのはずだ。
「1試合1試合、僕らにとっては全部同じような、厳しい試合がずっと続くと思っています。まずは次の試合に向けて、今日から良い準備していきたい」
3月3日のリーグ第24節では古巣シュツットガルトと対戦する。アウェーでは23試合連続で勝利がないが、記録とはいつか終わりがくるものだ。勝てば16位に浮上して自動降格圏から脱出できる。浅野がチームを勝利に導けるか、注目の一戦だ。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。