ハノーファー浅野拓磨が“切り札”であるべき理由 覚醒に必要な改善点とは?
フランクフルト戦は前節から積極性の部分で前進も、ドル監督は「ドリブル勝負」を要求
日本代表MF原口元気と浅野拓磨の所属するハノーファーは、現地時間24日のブンデスリーガ第23節で元日本代表MF長谷部誠を擁するフランクフルトと対戦した。“日本人対決”となった一戦の観客動員数は3万9100人。今季ワーストの第20節RBライプツィヒ戦(3万2400人/0-3)、ニュルンベルク戦(3万3700人/2-0)よりは売れているがそれでも1万席以上が空席となった。
その要因の一つとして、前節ホッフェンハイム戦(0-3)での不甲斐ない戦いぶりが挙げられている。試合前にトーマス・ドル監督は、「ファンの気持ちは分かる。失望が深くのしかかっているのだろう。だが観客一人一人の力が必要だ。バックアップとサポートが必要なんだ。それが我々を押し出してくれる。私もホッフェンハイム戦のようなパフォーマンスは二度と見たくはない。本物のチームとしてプレーすればまた4万人以上の観客が来てくれるようになるはずだ」と選手の奮起を促し、ファンの声援を求めていた。
最終的にフランクフルト戦は0-3で敗れはしたが、少なくともこの試合では選手の戦う気持ちが感じられた。右サイドでフル出場した原口は、「最後のクオリティーのところで点が入らなかったり、逆にカウンターで危ないシーンが何個かありましたけど、前節よりはアグレッシブに戦えていたかなと思います」と手ごたえを口にした。
また、4試合ぶりにスタメンに名を連ねた浅野も、「守備の部分では前からしっかりプレスをかけに行って、1対1の場面というのをしっかり作って、一人一人の個のところで負けないというのは、今日はできていたのかなと思います。攻撃になった時も、僕自身は裏だけじゃなくて足元で受けるように、という指示が出ていた。前半はチームがやりたいプレーは少なからず出せていたのかなとは思います」と前半をポジティブに振り返っていた。
もっとも、「少なからず」できていた、「前半だけ」奮闘していただけでは、試合には勝てない。何かしらで相手を凌駕しなければ、チャンスにつなげることはできないのだ。ドル監督も修正の必要性を感じている。
「1対1の状況でドリブル勝負を仕掛けないと。センタリングばかりじゃダメだ。せっかく、ウチにはドリブルの得意な選手がいる。勇気を持って仕掛けなければならない」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。