Jリーグクラブで増えた強化の「外注」 失敗例も多い“模倣型”、成功の鍵は?
“バルサ化”が進む神戸 “シティ化”の横浜FMとともに外注先は同タイプ
今季のJリーグは強化を「外注」するクラブが増えた。ヴィッセル神戸はバルセロナのサッカーをそのまま取り込むつもりのようで、すでにアンドレス・イニエスタ、フアン・マヌエル・リージョ監督を加入させていたが、ダビド・ビジャも獲得した。コーチングスタッフもスペイン人で固めている。
スペインへの強化の「外注」ということでは、アジアカップに優勝したカタールがそうだった。プレースタイルと試合展開に応じた対応策まで手の内に入れていて、ある意味、非常にすっきりしたチームだった。なぜサッカーをするのか、どのようにプレーするのか、そのためにはどういう選手が、トレーニングが必要なのか……。そっくり輸入しているので迷いがない感じなのだ。
人口の9割が外国からの労働者という国柄なので、仕事を外注するのに感覚的に違和感がないのかもしれない。外に良いものがあるなら、そっくりそのまま買ってしまえばいいという考え方である。
横浜F・マリノスもシティ・フットボール・グループが経営権を握って以来、“シティ化”を推し進めている。マンチェスター・シティの戦術をそのまま移植し、昨季はポジショナル・プレーで注目された。ボールポゼッションはJ1最高を記録、リーグ2位タイの56ゴールをあげながら、失点も56と多く12位に終わった。ジョゼップ・グアルディオラの戦術的ノウハウを世界規模で広めていくプロジェクトは日本だけでなく、メルボルン・シティ(オーストラリア)、ニューヨーク・シティ(アメリカ)、ジローナ(スペイン)と進行中だ。
サガン鳥栖は「外注」とまではいかないが、アヤックスとの提携が注目される。ルイス・カレーラス新監督はスペイン人で元バルセロナの選手。バルセロナはアヤックスのサッカーを「輸入」して、今日の姿になった。今ではバルサ・スタイルと呼ばれるが、もとはアヤックス・スタイルだった。
バルセロナ、マンチェスター・シティ、アヤックスは同じ哲学、スタイルと言える。Jリーグクラブの外注先が同タイプなのは偶然ではないだろう。アヤックスを源流とするスタイルは、非常にロジカルで言語化が行き届いているために移植しやすい。ノウハウも確立されている。いずれも魅力的なプレーぶりと言われていて、ファンへのアピール度も高い。採り入れるなら、まずこれと考えたのも不思議はない。
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西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。