原口元気、ハノーファー“10番”の使命感 「得点への意欲がもう一度戻ってきている」
チームを勇気づけた原口の一撃 「点を取りたかった」
「背番号10」は飾りなんかじゃない。
チームの支えとなる存在になるために、ここにきた。だからこそ、アジアカップから戻った原口はすぐにそうした意欲をチームに還元しようとしていた。トーマス・ドル監督は「ゲンキはいい状態だった。出場に向けて気合が入っていたし、トレーニングでいい印象を残してくれた」と評価を口にし、スタメン起用をためらわなかった。
ニュルンベルク戦で試合の流れを変えたのは原口の右足シュートだった。ニュルンベルクが前半11分という早い段階で一人退場者を出したことで数的有利になったハノーファーだが、中央の守備を固めてカウンターというプランに切り替えた相手を揺さぶることができない。
そんななか同31分に味方のロングスローから原口が、強烈な右足ダイレクトボレーに持ち込んだ。枠を捉えたシュートは相手GKのファインセーブによって防がれたが、そこまでチャンスらしいチャンスがなかったハノーファーに、大きな勇気をもたらす一撃だった。
試合後「点を取りたかった。今、得点に対する意欲がもう一度戻ってきていると思っているし、そこを求めている」と振り返った原口は、枠を大きく外したものの前半9分に豪快にボレーシュートに持ち込むなど、立ち上がりから精力的に仕掛けていた。後半12分には中盤からドリブルで持ち込み、際どい左足シュートも放った。同29分には味方とのパス交換から右サイドのスペースに抜け出し、ゴール前のニコライ・ミュラーにパスを通す。
ドル監督が「華麗なサッカーではなかったとは思うし、そうしたサッカーを期待していたわけではない」と語るように、今のハノーファーに必要なのは泥臭かろうとなんだろうと、得点をもぎ取り、勝ち点3を手にすることだった。原口も、そのことはよく分かっている。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。