「日本人らしさ」になぜこだわる? 協会が掲げる「ジャパンズウェイ」に感じる曖昧さ
日本協会は目指すサッカーをしっかりと言葉で定義すべき
強化においては、勝つために有利なことを追求するだけで、それが日本人らしいかどうかなど考える余地はない。合理性だけが正しい。
一方で、代表チームの使命は勝つだけではない。日本のファンが共感するプレーをすることも重要な使命だ。W杯に優勝する以外、代表チームはどこかの段階で必ず負ける。結果よりも、どうやって勝とうとしたかのほうが、より重要とさえ言える。
ファンが「面白かった」「感動した」と言ってくれるようなプレーを目指さなければいけない。何が面白いのか、何が人々に共感と感動を与えるのか、それは人それぞれかもしれない。けれども、代表チームを統括する協会はサッカーのエキスパートなのだ。自分たちが「これだ」と思っているものを、自信を持って打ち出せばいい。
曖昧な「ジャパンズウェイ」などというキャッチフレーズに逃げ込まず、日本のサッカーをしっかりと定義すべきだ。我々はこうプレーすると宣言する。間違っていたら、そこから修正すればいい。勝てば日本人らしかったのなら、負ければ日本人ではないのか? そういうことではない。何をしようとして、結果はどうだったのか。「何」の部分が「日本人らしく」では、どうにもならないのだ。
せめて「日本人らしさ」とはサッカーにおいて具体的になんなのか、ディテールから言語化すること。言語化しただけでは当然なんの意味もないので、それを身体化して現実のプレーに反映させるにはどうするかも示す必要がある。
記憶するかぎり、協会がそれをやったことは一度もないのだが……。
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(西部謙司 / Kenji Nishibe)
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。