アジア杯を支えた「JAPANブランド」 モルテンがサッカーボールに込める“モノづくり精神”

モルテンのスポーツ事業本部プロダクトマーケティングでフットボールグループのリーダーを務める内田潤氏【写真:Footaball ZONE web】
モルテンのスポーツ事業本部プロダクトマーケティングでフットボールグループのリーダーを務める内田潤氏【写真:Footaball ZONE web】

G7広島外相会合で贈呈品の一つに選ばれた、モルテンの「ペレーダ」

 こうしたさまざまな条件下でも“均一な品質”を保証することは、選手のパフォーマンスを安定させる意味でも重要なことだ。椙浦氏は「現在の国際大会では1試合にボールを9球使いますが、この個体差をなくすことも重要なポイントになります。FIFAの国際公認基準(FIFA Quality Pro)では、5号球の重量は420~445グラムと規定されていますが、試合球の均質さを保つため、社内ではさらに厳格な基準を設けています」と語る。

 “ボールの変化”という点では、近年のW杯で公式球が登場するたびに話題になってきた。特に2006年ドイツW杯で登場した「+チームガイスト」からは、縫わずにパネルを接着する製法が一般的となっているが、2010年南アフリカW杯の「ジャブラニ」などはブレ球が出やすいボールとして大きな注目を集めた。当時は“GK泣かせ”のボールとなっていたが、内田氏によれば今回のアジアカップ公式球「ヴァンタッジオ」では、「ディンプルという表皮にくぼみを作る加工を施していて、空気抵抗を軽減し飛行安定性を高めています。またキック時のインパクトや、水による滑りの抑制にもつながっています」という。

 こうしたボールの開発は、大学との共同研究や多くのサッカー選手の意見を吸い上げながら行っているが、その底辺には日本企業としての“モノづくり精神”が息づいているようだ。同社は現在、ボールなどのスポーツ用品以外に、自動車用部品などの製造も手掛けており、安全性も含めた技術力は高く評価されている。そのうえでボールの品質を追求するためには、競技そのものへの理解が不可欠だという。椙浦氏が続ける。

「1990年代後半にFIFAによるサッカーボールに関する国際会議が発足し、現在もサッカーボールのあるべき姿について毎年会議が開催され品質が追求されています。ただ、国際公認を受けているボールメーカーの中でも、自社で開発、研究を行っているブランドは世界でもそれほど多くありません。やはりボールの品質を向上させるためには、作る技術はもちろん大事ですが、将来を見越してどういうものがボールとして相応しいのか、水準を少しでも上げていこうという継続的な活動が必要と考えています」

 同社が長年にわたって培った高い技術力は、サッカーの枠を越えて認められている。その一つの例に挙げられるのが、2016年4月に広島で開かれたG7広島外相会合だ。日本から各国外相への贈呈品の一つとして、モルテンのサッカーボール「ペレーダ」が選ばれたのである。

[ftp_del]
>>【PR】元浦和の鈴木啓太氏が2018年Jリーグを総括 DAZNで広がる「観る側の面白さ」
[/ftp_del]

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング