海外から見た「高校サッカー」 “逆輸入”だからこそ分かる日本のスポーツ文化

ピッチ上で戦う選手にエールを送る応援団【写真提供:ヨコハマ・フットボール映画祭実行委員会】
ピッチ上で戦う選手にエールを送る応援団【写真提供:ヨコハマ・フットボール映画祭実行委員会】

育成年代における実力差の“大きい”中国、“小さい”日本には競争力がある

「日本の高校サッカーが、中国の高校サッカーと全く同じ状況とは言えませんが、参考にできる点があるのは言うまでもありません」

『少年足球養成』と題された中国のドキュメンタリー映画の冒頭で語られた言葉だ。この映画が日本の「高校サッカー」をテーマにし、アジアにおけるサッカー先進国である日本の育成年代から学び取ることを目的として、制作が始まったことが分かる。時代の移り変わりとともに、指導者の労働問題、指導方法、過密スケジュールなどの問題点が取り上げられることが多くなった「高校サッカー」は、日本のサッカーにおいて、すでにその役割を終えているとの見方もある。しかし、海外からの見え方を知ることで、見直せることがあるように思う。

 この映画は、昨年度の第96回大会での取材を基に作られている。今年の決勝戦にも出場した流通経大柏の関川郁万(→鹿島アントラーズ)や、青森山田の三國ケネディエブス(→アビスパ福岡)などが登場する場面もあるが、主軸は青森山田の黒田剛監督や清水桜が丘の大滝雅良監督などへのインタビューを通して、「高校サッカー」を知ろうとしている。

 そのなかで、指導者として日本のサッカーに貢献するトム・バイヤー氏とともに観戦する場面がある。日本をはじめ中国のサッカーも知るトム・バイヤー氏は、両国を比較し中国に「競争力が大事」とアドバイスしていた。

「日本の高校年代のサッカー選手、あるいはもっと下の年代の選手たちには高い技術を持つ人がたくさんいます。選手の実力差はそんなに大きくないと思う。しかし中国だと、こんなに大きな差が出るんですよ。だから競争があまり厳しくないです。“競争”、それが大事ですね。それが大きな問題です」

「高校サッカー」を見ている人には言うまでもないことだが、選手たち個々の技術は年々上がっている。しかも、全国の代表48校のどの選手を見ても同じことは言えるし、トム・バイヤー氏が指摘するように上と下のレベル差が年々小さくなっている。その象徴とも言えるのが、今やどの都道府県の代表の、どの学校が優勝してもおかしくはない戦国時代に突入していることだ。選手個人の向上心も高いうえに、指導者も熱心に勉強する人が増えている証しだろう。その映画の中で、そのことを分かりやすく解説している言葉があった。

「本田圭佑のような選手でも優勝をしていないどころか、全国大会に一度出場したのみです」

 のちの日本代表エースですら勝てない、レベルの高い大会ということを伝えている。

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