マンUは真の復活を遂げたのか? 元主将OBが訴え「サッカーを知る人間に決定権を」
名将退任後は様変わり、スポンサー重視の対応へ
それに加えてファーガソン監督が目を光らせていた頃は、高額な提携料を支払って新たにユナイテッドのスポンサーに名を連ねた企業のお披露目も、非常に簡素なものだった。
香川の1年目はヤンマーをはじめ、多数の日本企業がユナイテッドのスポンサーになったが、その提携発表会に招かれたのは日本人記者と少数の現地記者だけ。会場も小さな会見ルームを使った慎ましいものだった。セレモニーもほんの15分程度のもの。簡単な企業紹介と提携の概要を説明して終わり。さすがに日本企業との提携発表の場には香川が顔を出したが、壇上でスポンサーと並んで写真撮影に応じると終了で、基本的に質疑応答はなし。あったとしても質問は2~3問に限られ、取材する側からすると非常に素っ気ないものだった。
ところが御大が引退すると、それを合図にしたかのようにお披露目の規模が拡大した。
まず、最初に印象に残ったのがモイーズ初年度の開幕直後に行われたロシア航空会社「アエロフロート」との提携発表だ。ファーガソン監督時代には考えられない、非常に華やかな催しだった。まるで、映画のプレミアのような雰囲気だった。招待された報道陣も以前とは比べものにならないほど多数で、音響設備が整った特別ブースの大会場が設置され、その中で軽食やシャンパンが振る舞われた。さらにびっくりしたのは、モイーズ監督をはじめ、一軍選手全員がこのセレモニーに参列したことだった。
さらに高級時計ブランド「ウブロ」のお披露目会にも驚いた。まずは会場。これがなんとユナイテッドのトレーニング・グラウンド『キャリントン』内にある、豪華で近代的なクラブハウスである。強面のファーガソン監督が、ここにメディアの立ち入りを許したのは試合前の定例会見のみ。しかも、招待された常連の英国人記者しか入れなかった。
しかし、この時計ブランドのお披露目パーティーにもアエロフロートと同様、大人数の報道陣が招かれ、モイーズ監督は無論、香川をはじめとする主力選手が全員参加。まるで立食パーティーのように、報道陣と選手が入り混じった。これまでユナイテッドのスターと、ここまで近づくチャンスはなかった。
我々日本人記者団はもちろん香川を囲んだが、そこにウェイン・ルーニーが飛び入りで談話に参加する大サービスだった。このワンダーボーイとの2ショットには、チームメートながらルーニーに敬意を抱いていた香川本人も大喜びだった。
より密接に取材がしたい記者団、そしてユナイテッドとの提携をより大きくメディアに取り扱ってほしいスポンサーにとっては大変ありがたい変化である。しかし、現場にとってはどうなのだろうか。
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森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。