日本代表が露呈した「対応力、修正力」の未熟さ 最後まで現れなかった“救世主”
日本は試合前の段階で遅れを取り、試合中の対応も後手を踏んだ
その原因は、前線でボールが収まらないため、トップ下の原口元気、南野、堂安律の3人の距離が遠く、1タッチ、2タッチによる日本が得意とするコンビネーションプレーができなかったこと。攻撃に緩急の変化がなく、マイボールになってもスプリントする選手がいないため、攻撃がスピードアップしないこと。カタールと比べて一人ひとりがボールを持つ時間がコンマ何秒の差ではあるが長いため、守備側からすると次のパスコースが読めること(プレスをかければバックパスしてくれた)などが指摘できる。
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そうした展開の時はCKやFKなどのセットプレーがチャンスになるが、空中戦はカタールにことごとく弾き返される。CKキッカーは柴崎岳が務めたが、右CKなどはレフティーの堂安が蹴れば変化が期待できるのではないかと思ったほどだ。
このため日本がコンビプレーを発揮できたのは前半42分に右サイドの酒井宏樹がグラウンダーのパスを入れ、大迫勇也がスルーし、南野がワンタッチで大迫に出した1回だけ。森保監督がキーワードに掲げる「対応力、修正力」は攻守とも発揮できない前半でもあった。
それでも後半は、ようやく酒井や長友佑都が縦のスペースに長いパスを出して堂安や原口を走らせるプレーも出始める。後半10分には冨安健洋が果敢な攻撃参加で右サイド深くまで侵入してクロスを送るなど、攻撃に変化の兆しは見えた。ただし、それでも後半の日本の決定機は南野がゴールを決めた1回だけ。90分間を通じて常に試合を支配していたのはカタールで、勝利に値するサッカーをしていたのもカタールだった。
ただし、それが両者の実力を反映していたかと言えば答えはノーだ。スカウティングとゲームプランで日本は遅れを取り、それを最後までリカバーできなかった「対応力、修正力」の未熟さが、結果として表れたと言える。
そしてもう1点つけ加えるとしたら、日本が先制された2試合は、いずれも選手交代をする前にスタメンの選手で逆転している。交代選手が劇的な活躍で勝利を導くといった「ラッキーボーイ」「救世主」が今大会は不在だった。残念ながら武藤嘉紀、伊東純也、北川航也、乾貴士は短い出場時間で結果を残すことができなかった。それは彼らの実力不足というより、プレーの特長が森保ジャパンの目指す攻撃スタイルに合致していなかったことが一番の原因だろう。
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六川 亨
1957年、東京都生まれ。月刊サッカーダイジェストの記者を振り出しに、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任。01年に退社後はCALCIO2002、プレミアシップマガジン、サッカーズ、浦和レッズマガジンなどを創刊して編集長を務めた。その傍らフリーの記者としても活動し、W杯や五輪などを取材しつつ、「サッカー戦術ルネッサンス」(アスペクト社)、「ストライカー特別講座」、「7人の外国人監督と191のメッセージ」(いずれも東邦出版)などを刊行。W杯はロシア大会を含め7回取材。現在は雑誌やウェブなど様々な媒体に寄稿している。