「アジアのバルサ」から「アジアのレアル」へ 日本代表が中東の地で見せた新たな姿
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“特化型”のバルサと“全方位型”のレアル
2011年のアジアカップで優勝した時、日本代表は「アジアのバルセロナ」と呼ばれた。命名したのは、当時カタールを率いていたブルーノ・メツ監督だった。アルベルト・ザッケローニ監督が率いていたチームがバルセロナなら、森保一監督が率いる今大会の日本は「アジアのレアル・マドリード」だったかもしれない。準決勝までは「EURO2004のギリシャ」と言われていたが……。
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バルセロナは“特化型”のチームだ。確固たるスタイルを持ち、常にバルセロナらしくプレーする。サッカーの局面を4つに分けると「ポゼッション攻撃」と「カウンター攻撃」、その裏になる「対ポゼッションの守備」と「対カウンターの守備」になる。それぞれの間にあるトランジションも重要なのだが、4局面で言えばバルセロナは「ポゼッション攻撃」と「対カウンター守備」の組み合わせになっている。カウンターも強力なのだが、ポゼッションと被カウンターでほぼ試合が完結してしまうので、カウンターの出番はあまり多くならない。
バルサのライバル、レアルも基本的にはバルサと同じ2局面の組み合わせである。長年にわたって覇権を争う宿敵だけにバルサスタイルを真似たわけではないが、バルサとレアルはどこよりもお互いに似ている。
ただし、レアルはバルサほど自分たちのスタイルに特化していない。理由の一つは同じリーグにバルサがいるから。同じスタイルで勝負することもあるが、バルサにボール支配を譲る時もあるし、ボール支配で太刀打ちできない時もある。
もう一つの理由として、レアルはここという時には相手の嫌がることを優先するからだ。堅守速攻のアトレチコ・マドリードにボールを持たせて勝った二度のUEFAチャンピオンズリーグ決勝(2013-14、15-16)は、典型的なレアルらしい勝ち方だった。リバプールの速攻スペースを消し、ハイプレスさせてはパスワークで空転させた昨季のファイナルもそうだった。
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西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。