ベトナムから見た“アジア杯8強”の歴史的舞台 戦いの裏に見えた日本への敬意と野心

チームを率いるパク・ハンソ監督【写真:©AFC 】
チームを率いるパク・ハンソ監督【写真:©AFC 】

人々を魅了するパク・ハンソ監督の男気

 昨年末のAFFスズキカップ(ASEAN諸国の国際大会)、そして今回のアジアカップとベトナム代表を追いかけたが、パク・ハンソ監督の男気には日本人である筆者でさえも感銘を受けた。

 日本戦後の会見、地元UAEメディアや韓国メディアからの質問が集中したことを危惧し、司会者へ「ベトナムメディアの質問も拾ってくれ」と頼んでみたり、会見終了後にはベトナムや韓国メディアへ感謝の握手をしに自ら歩み寄り、最後には手を振り一礼して会見場を去っていった。

 また試合中、ピッチ上の選手を呼び寄せる術は“指笛”ではなく“鳩笛”。指示が伝わらないと思えば、大きな紙に書いた“指示メモ”を直接選手へ手渡してみせる。それが良いか悪いかはさておき、なんとも実直でお茶目な60歳に好感を持ち、ベトナム国内で人気を博している意味を理解した気がした。

「日本に敗れたことは悲しいが、闘った選手たちは素晴らしかった。またアジアカップでの私たちの戦いは非常にドラマチックだった。日本、イラン、イラクのような強豪国と対戦できた経験は、これからのベトナムサッカーに必ず役立つはずだ」

 “ゴールデン・ドラゴンズ”(ベトナム代表の愛称)は、ASEAN王者としての誇りを示し、最後まで勇敢に戦い抜いてみせた。パク・ハンソ監督の試合後のコメントからも感じられるように、アジア8強という成果を手にした彼らのチャレンジは成功だったと言っていいだろう。

 今大会にも出場しベスト16へ勝ち上がったタイ。強豪相手にも臆することなく善戦したフィリピン。そして彼らの後にはマレーシア、インドネシア、ミャンマーなどが隙をうかがい、追随するASEANサッカー事情がある。2022年カタール大会から、出場国枠が拡大されるかもしれないと言われているワールドカップ。彼らはアジアを飛び越え、虎視眈々と世界の舞台を狙っている。

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(佐々木裕介 / Yusuke Sasaki)

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