“ありえない”ことが起きた堂安のPK判定 サッカーの常識を破る1分後のVARの問題点
サッカーの時間は本来“不可逆”、1分間も遡ることはありえない
ところが、日本対ベトナムではプレーが切れた時に、PK判定の前にベトナムの選手交代が行われていた。これを認めたということは、仮にインプレー中の1分間にベトナムのゴールがあったとしたら認めなければならないはずだ。その時は、日本にPKを蹴らせてから日本のキックオフで始めるのか、それともベトナムのボールで再開するのか――。もう無茶苦茶になってしまう。
たぶん、ベトナムの交代を認めたのが誤りで、本来は日本のPKが終わった後に交代させるべきだったのだろう。ただ、VAR確認前に1分間もインプレーになってしまうのは、運用上大きな問題があると思う。サッカーの時間は本来、不可逆であるはずだ。
アドバンテージを適用する場合でも、1分間も遡ることはありえない。攻撃側がファウルされたが、まだ攻撃は続行されていて攻撃側に有利だと判断すれば、主審はアドバンテージを適用する。しかし、次の瞬間に攻撃側の選手がボールを失った場合、時間を遡って最初にファウルされたところからFKで再開することはある。しかし、遡れる時間はせいぜい5秒か10秒程度だ。1分間も経過してから「やっぱりファウルにします」はありえない。
ところが、VARではその「ありえない」ことが起こり得るのだと今回のケースで分かった。機械の導入で判定精度は高まるが、人間がどう運用するかの詰めが甘すぎるのではないだろうか。
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西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。