「サッカーとは改めて面白いな、と」 35歳の“リベロ”長谷部誠、ドイツでの飽くなき探究心
「経験から来るものは間違いなく自分の中で武器になっている」
圧巻のゴールショーに、本拠地コメルツバンク・アレーナが熱狂の渦と化す。しかし、そんななかでも長谷部はどこまでも冷静に戦況を見つめ、味方たちを鼓舞し、時に叱咤していた。ゴールの際には必ず最後方で一旦両手を挙げてゆっくりと歓喜の輪へ歩み寄り祝福の意を示すが、返す刀で誰かを捕まえて予測される次への準備を促す。
後半に入りフライブルクが攻勢を仕掛けて防戦の流れになると、一旦プレーが切れた際にあえて主審の下へ歩み寄ってジャッジの正誤を問い質したりもしていた。そのどれもが勝利へ直結させるための懇切丁寧な作業で、20代前半が主力を占める現チームの中で、長谷部の存在感はどこまでも際立っていた。
相手の反撃を1点に抑えて3-1で勝利した試合後に彼が語った。
「正直あまり良い内容ではなかったなかで、それでも後半戦初戦で勝利できたことは大きいかなと思っています」
1月18日に35歳の誕生日を迎えた長谷部は達観した思いで現状を見つめ、自らができる最大限のパフォーマンスを発揮すべく尽力している。
「もちろん経験から来るものは間違いなく自分の中で武器になっていると思うし、年齢を重ねればもちろん落ちてくるものも、自分の中で感じています。ただ、それを補うだけのものをその経験で埋めて、今はやれているかなとは正直感じている。サッカーというものは改めて面白いなと、今は感じています」
試合開始時に強い光を浴びせていた太陽はすでに沈み、辺りは暗闇に包まれていた。しかしスタジアムの周囲だけは照明の眩いカクテル光線が注がれ、その光に包まれたファン・サポーターが喜色満面に何かを語り合っている。
耽る夜は、鮮烈な昼間と同等に尊い。その柔和で穏やかなひと時を享受すべく、人々が連なりながらスタジアムを後にしていた。
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(島崎英純/Hidezumi Shimazaki)
島崎英純
1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。