元Jリーグ監督が日本戦で示した矜持 異色の中東勢オマーンに見るアジアの奥深さ
広大なアジアでは「郷に入っては郷に従え」が主流?
12日にはベトナム対イラン(0-2)の試合を取材した。ベトナムの監督は2017年に就任した韓国人のパク・ハンセオ氏だ。彼の詳細は知らないが、ベトナム代表に持ち込んだのは各選手の役割を明確にし、合宿中の集団生活では規律を重んじることだそうだ。ここらあたりは儒教の影響の強い韓国人らしい指導法と言える。
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しかしベトナムのサッカーに、韓国のようなフィジカルやスピード、スタミナを生かす傾向は見られない。球際の争いでは頑張っていたものの、イラン相手では荷が重かったようだし、ベトナムの気候を考慮すればスピードやスタミナを強調することは無謀でもあるだろう。このため、これまでのベトナムのように個人技主体のスキルフルなサッカーでイランに挑んでいた。
UAEやベトナムに限らず、広大で風土も気候も違うアジアでは、監督の志向するサッカーよりも「郷に入っては郷に従え」ということのほうが理にかなっているのかもしれない。日本もポゼッションのサッカーはできるので、カウンターを体得しようとバヒド・ハリルホジッチ監督を招聘したものの、「道半ば」で終わり、西野朗監督の掲げる「ジャパンズ・ウェイ」で昨夏のロシア・ワールドカップではそれなりの成功を収めた。
話をオマーン戦に戻そう。高い最終ラインを敷いたオマーンだったが、裏返せば背後には広大なスペースがあることになる。そこで前半の日本はロングパスやスルーパスから南野拓実が再三、決定機を迎えた。冨安健洋のヘッドによるクリア(だと思う)が裏に抜けて、決定機を迎えた場面もあった。
オマーンのフラットな最終ライン4人によるゾーンディフェンスは、日本の2列目の3人がポジションチェンジするとマークがルーズになるなど、前半は混乱していた。それでもGKの好守により最少失点に抑えたことで、現在模索しているサッカーに手応えをつかんだかもしれない。
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六川 亨
1957年、東京都生まれ。月刊サッカーダイジェストの記者を振り出しに、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任。01年に退社後はCALCIO2002、プレミアシップマガジン、サッカーズ、浦和レッズマガジンなどを創刊して編集長を務めた。その傍らフリーの記者としても活動し、W杯や五輪などを取材しつつ、「サッカー戦術ルネッサンス」(アスペクト社)、「ストライカー特別講座」、「7人の外国人監督と191のメッセージ」(いずれも東邦出版)などを刊行。W杯はロシア大会を含め7回取材。現在は雑誌やウェブなど様々な媒体に寄稿している。