元Jリーグ監督が日本戦で示した矜持 異色の中東勢オマーンに見るアジアの奥深さ

2016年よりオマーンの指揮を執るピム・ファーベーク監督【写真:©AFC 】
2016年よりオマーンの指揮を執るピム・ファーベーク監督【写真:©AFC 】

かつて大宮などを率いたピム・ファーベーク監督が変えた、オマーンのスタイル

 アジアカップのグループFの2試合が13日に行われ、日本は原口元気のPKでオマーンに1-0と勝利を収め、ウズベキスタンは前半に大量4点を奪ってトルクメニスタンに4-0と快勝した。ともに1試合を残し決勝トーナメント進出を決めたが、得失点差でグループFの1位はウズベキスタンで、日本が2位となっている。両チームは17日にアル・アインに会場を移して対戦するが、日本は1位通過を果たすためには勝たなければならない一戦となった。

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 オマーン戦の試合開始前、バックスタンド左に陣取った相手の応援席からは、中東のチーム特有のアラビア語による歌声が響いてくる。今大会に入って初めて聞くだけに、「やっと中東に来た」と実感できる雰囲気だった。

 ところが目の前でプレーするオマーンは、中東のチーム特有のゴール前を固めてカウンターを狙うスタイルではなかった。攻撃時は4-2-3-1からビルドアップを試み、守備時は4-4-2のコンパクトでフラットな3ラインを高い位置で敷いてくる。

 前日の公式会見で森保一監督は、オマーンを「速攻も遅攻もできるチーム」と警戒したが、目の前のオマーンのサッカースタイルは、2016年より同国の指揮を執るピム・ファーベーク監督が、98年から99年にJリーグの大宮アルディージャを率いていた時に採用していたスタイルと酷似していたのには驚いた。

 驚いたのは大宮に似ていたこともさることながら、それ以上にオマーンがサッカースタイルの変化を受け入れたことだ。

 オマーン対日本の3日前、インド対UAE(0-2)の試合を取材した。UAEを率いるのは元日本代表監督のアルベルト・ザッケローニである。ザックは日本代表監督時代、4-2-3-1のシステムからバイタルエリアを空けることで、本田圭佑や香川真司が飛び込めるスペースを作り、彼らが入り込むことで前田遼一とのダブルトップからアジアの頂点に輝いた。

 しかしUAEに、“ザック・サッカー”の片鱗は見られなかった。システムこそ同じ4-2-3-1だったものの、攻撃の主体はこれまで通りカウンターで、2ゴールとも縦パス1本で陥れたものだった。

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六川 亨

1957年、東京都生まれ。月刊サッカーダイジェストの記者を振り出しに、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任。01年に退社後はCALCIO2002、プレミアシップマガジン、サッカーズ、浦和レッズマガジンなどを創刊して編集長を務めた。その傍らフリーの記者としても活動し、W杯や五輪などを取材しつつ、「サッカー戦術ルネッサンス」(アスペクト社)、「ストライカー特別講座」、「7人の外国人監督と191のメッセージ」(いずれも東邦出版)などを刊行。W杯はロシア大会を含め7回取材。現在は雑誌やウェブなど様々な媒体に寄稿している。

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