【W杯詳細分析・イタリア-コスタリカ】崩れ始めた「組織力対個」の構図 ポゼッションサッカーがゴールに直結しなかったイタリアとリスクを冒してゴールへ向かったコスタリカ

危険なエリアと入り込めなかったイタリア

 

 前の選手もスピードに優れた⑨キャンベルを前線に置き、ルイスとボラニョスが左右バランスよく配置されているのが分かる。これまで欧州の強豪国と南米、北中米、アフリカのチームの特徴を組織力対個の力という表現で表すことが多かった。しかし今大会目立つのは欧州以外のチームの守備における組織が整備されていることだ。これが南米の気候に加えて欧州のチームが南米、北中米カリブ、アフリカのチームに苦戦している理由だ。

 イタリア対コスタリカパス図

 二つ目のイラストはコスタリカ、イタリアそれぞれのチームのパス、クロス、シュートの軌跡を示したものだ。緑のラインは成功(シュートの場合は枠に飛んだもの)、赤のラインは失敗(シュートの場合は枠を外れたもの)を示す。

 左のコスタリカはボールタッチ数が少なく、前に早く運ぼうとしているのが分かる。縦への赤いラインが多いが、リスクを冒して前に攻めた結果ペナルティーエリア内への侵入も多い。右のイタリアはミドルサード(ピッチを縦に三分割した時の中盤のエリア)まではほぼ綺麗にグリーンのラインで埋め尽くされている。しかしその多くは横方向へのパスだ。積極性という気持ちの問題とは別に、フィジカルに優れた個の選手にしっかりとした組織を作られてしまい危険な場所に入って行けなかったことが見て取れる。

 決して、ポゼッションサッカーあるいは自らアクションを取るサッカーの終焉と、カウンターサッカーの復権という二軸で捉えるつもりはない。しかし、EURO2008以降、2010年W杯、そしてEURO2012とメジャーな大会を3連覇したスペイン代表、あるいはそこで多くの主力選手を輩出したFCバルセロナを打ち破るために、多くの強豪チームが様々な戦い方を模索してきたことは間違いない。

 これまで多く語られてきたポゼッション対カウンターという対立軸が外れ、サッカーの試合に勝つためにどちらも必要に応じて出来る、つまり戦術の代替案を持ち、状況に合わせた判断に優れ、時にそうした理性を超えた個のスキルとアイデアを持ち合わせた選手がいる、というようなチームがこの大会を制するように思う。

analyzed by ZONE World Cup Analyzing Team
データ提供元:opta

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

 ※ワールドカップ期間中、サッカーマガジンゾーンウェブが記事内で扱うシーンやデータの一部はFIFAワールドカップ?公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』で確認できます。
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