アジア杯”1月開催”が生む欧州組の不利益 日本協会に求めたい環境改善への政治力
JFAはアジア杯開催時期を他大陸に合わせるロビー外交をすべき
日本がアジアカップに初めてフル代表を参加させたのは、1992年の広島大会だった。この時、初優勝してから4度のタイトル奪取に成功してきたが、実は欧州進出の先駆者だった中田英寿は1度も参加できていない。3度目の優勝を果たした2004年中国大会も、欧州から参戦したのは中村俊輔(当時レッジーナ)と川口能活(同ノアシェラン)だけだった。
FIFA(国際サッカー連盟)はコンフェデレーションズカップを廃止する方針で、アジアカップに重要な付加価値はなくなる。それでもJFA(日本サッカー協会)は関塚隆技術委員長以下「優勝」を公言するが、反面、大会期間中にクラブを離れた吉田麻也(サウサンプトン)や武藤嘉紀(ニューカッスル)らがプレミアリーグの舞台でポジションを奪還するのは、ますます難しくなる。
日本の進化は、そのまま個々の欧州進出拡散の歴史と符合する。代表への貢献が所属クラブでの不利益につながるような環境の改善は、JFAが真っ先に取り組むべきテーマだ。まずは開催時期を他大陸に合わせるためのロビー外交を展開し、同時にどうしても夏季のプレーが難しい中東開催の場合は国内組中心の編成を検討するなど、随時状況に即した善後策が必要になる。
この競技の代表強化は、ピッチ上だけでは成立しない。
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(加部 究 / Kiwamu Kabe)
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。