アジア杯”1月開催”が生む欧州組の不利益 日本協会に求めたい環境改善への政治力

2大会ぶりの優勝を目指す日本代表【写真:Getty Images】
2大会ぶりの優勝を目指す日本代表【写真:Getty Images】

アフリカネーションズカップは夏開催に移行 欧州シーズン中の開催はアジアのみ

 日本代表は今回のアジアカップを、欧州組が過半数の12人という構成で戦っている。ロシア・ワールドカップの時に比べればJリーガーが2人増えたが、一方で開幕のトルクメニスタン戦でスタメン出場したのはGK権田修一(サガン鳥栖)と槙野智章(浦和レッズ)の2人のみ。大会参加国中で最も欧州組中心の色が濃いチームになっている。

 欧州で活躍する選手が増え、その中でも競争があるのは輸出国として喜ばしい限りだが、反面、欧州側へと視点を変えれば最も迷惑な国になる。幸か不幸か、現状では所属クラブで出場機会に恵まれていない選手も少なくないが、主力として活躍中の堂安律や冨安健洋などに抜けられるフローニンゲンやシント=トロイデンは痛恨の思いだろう。

 プレミアリーグの上位につけるトットナムのソン・フンミン(韓国)は、グループリーグ3戦目からの合流になるそうで、欧州シーズンの最中に開催される大陸選手権だけに、重要な選手ほど協会と所属クラブとの綱引きが激しくなる。おそらく森保一監督も、その辺の事情は十分に考慮し、トゥールーズに移籍したばかりの昌子源やベルギーで大ブレイク中の鎌田大地(シント=トロイデン/冨安と遠藤航の2人を招集)などの招集は見送ったのではないかと推測する。

 これまで欧州のビッグクラブにとって、最大の頭痛の種はアフリカネーションズカップだった。アジアカップ同様に年明け開催が続き、しかも隔年開催だったので、シーズン半ばの重要な時期に再三主力級が抜けることになった。かつてはジョージ・ウエア(元リベリア代表)のようにバロンドールを受賞する突出したスターも存在して、タイトル争いにも多大な影響を及ぼした。

 そしてついに2年前の前回大会では、カメルーン代表のジョエル・マティプ(リバプール)らが出場を辞退。こうした状況を鑑みて、今年からアフリカネーションズカップは夏季開催への移行が決まった。つまりこれで欧州、南米、北中米、アフリカが足並みを揃え、欧州のシーズン中に大陸選手権を行うのはアジアだけになった。

 残念ながら発展途上のアジアで、欧州クラブとの綱引きがあるのは日本、韓国、オーストラリア、イランなど一部の強豪国だけだ。ただしこういう状況が続けば、欧州のクラブ側はただでも言葉や文化の壁があるアジアの選手を敬遠するようになる可能性もある。

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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