逆境を常に乗り越えてきた長友 「今、信じることは勝利」

「厳しいのは自分たちが一番分かっている」

「周りに愚痴をいう選手じゃない。義務ではなく、何がやれるのかを考えて行動に移した。走りに行くことが正しい答えかどうかではなく、アクションを自分で起こせる。そういうところが彼の生きざまや、ここまでの成功につながっている」(立石敬之FC東京強化部長)

 だから彼の進化は止まらなかった。その後、人知れずそうした努力を続けた。FC東京時代に高い評価を受けたのは、ブラジル代表FWフッキを完封した守備力だった。しかし、現在の長友は両足から正確なクロスを配球し、得点力も兼備するようになったのだ。

 そして、ブラジルの地で再び逆境に立たされている。報道陣からは盟友についても、「本田も本来のパフォーマンスを発揮できておらず苦しんでいると思うが?」と質問が飛んだ。しかし、長友は少しの沈黙を置いたが、それに答えようとはしなかった。日本が決勝トーナメントに進出するためには、1次リーグ最終戦でコロンビアに勝利し、かつ同組のコートジボワールが引き分け以下に終わらなければ望みは消えてしまう。

「厳しいのは、自分たちが一番分かっている。ただ、やるしかない。それしか言えない。可能性を信じてやるだけです」

 前向きな言葉を吐き出す男を突き動かすのは、揺るぎない信念だった。「今、信じることは勝利ですね。この大会に向けて、4年間、どのチームよりも強く思い続けてきたと思っている。その準備もしてきた。信じてやるだけです」。4年間、どんな困難からも逃げ出さず、いまを懸命に過ごしてきた。長友佑都は、このままでは苦い記憶しか残らない王国での冒険をここで終えようとは微塵も思っていない。

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

※ワールドカップ期間中、サッカーマガジンゾーンウェブが記事内で扱うシーンやデータの一部はFIFAワールドカップ?公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』で確認できます。
詳しくは、「LEGENDS STADIUM 2014 – FIFAワールドカップ公式動画」まで

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