J2徳島の井筒陸也、24歳でプロサッカー選手を引退 「人生を懸けた勝負」で志すもの

井筒陸也がクラブとの契約満了をもってプロサッカー選手を引退すると発表した【写真:TOKUSHIMA VORTIS】
井筒陸也がクラブとの契約満了をもってプロサッカー選手を引退すると発表した【写真:TOKUSHIMA VORTIS】

昨季J2で33試合に出場もキャリアに一区切り 「成し遂げられるか、られないか、ギリギリの勝負に新しく挑みたいと思った」

 J2徳島ヴォルティスのDF井筒陸也がクラブとの契約満了をもってプロサッカー選手を引退すると発表した。24歳。デビューから3年という短さで、キャリアに一つの区切りをつける。2018年シーズンはJ2リーグ戦で33試合に出場(スタメン30試合/1得点)した中心選手だったにもかかわらず、だ。

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 来季に向けては東京・新宿を本拠地とする関東リーグ2部の社会人サッカークラブ、Criacao Shinjukuに加入することも決まった。同クラブを運営する株式会社Criacao(クリアソン)でビジネスマンとして働きながら、Jリーグ入りを目指すクラブでアマチュア選手としてプレーすることになる。

 2019年を節目に、井筒の人生は大きく変わろうとしている。

 プロスポーツ選手のあり方についてブログやSNSで発信を続け、昨年はJリーガーが集まるオンラインコミュニティー「Ziso.(ジソ)」も立ち上げた。そうしたなかで、彼はなぜ24歳の若さでプロとしてのキャリアに見切りをつけたのか。そして、これからいったい何をしようというのか――。彼は人生を懸けた勝負をしたいと口にして、新たな道へ進む。その胸に秘める思いを訊いた。

◇  ◇  ◇

――大卒から徳島に入って、プロ生活は3年間。チーム内でレギュラークラスの選手が24歳で引退というのは、なかなか異例なことです。

「そうですよね。でも、僕にとってはサッカー選手を辞めることは一般社会での転職となんら変わらないことだと思っています。まずは3年、なんてことを意識していたわけではないですが、やっぱり焦りみたいなものがすごくあったんですよね。セカンドキャリアに不安があったというような意味ではなくて、もっともっと自分を鍛えて、社会になんらかの価値を与えられる人になりたいと思った時に、今とは違う苦しみを味わう必要があるんじゃないかなと感じていたんです。

――この1年ほど井筒さんをずっと追いかけてきた身として“らしいな”と感じますが、決断に至った決定的なものはどこにあったのですか?

「そうですね……今年もなかなか勝てないシーズンでした。3年間、同じような順位(9位、7位、11位)。勝てなくて悔しい試合がめちゃくちゃあって、そういう時に、どうすれば勝てるのかを自分自身でもっと掘り下げて考えたいと思ったんです。

 特に夏から冬にかけては、負けた試合だけじゃなく、勝ったけど満足できなかった試合もたくさんありました。お陰さまで今年は多くの試合に出させてもらい、個人間の競争からチームの競争に集中できました。そうなった時に『勝利』についてもっと違う角度から見てみたいな、と思ったんです」

――それにしても、このタイミングでの引退にはやはり驚く人も多いでしょうね。プロ選手のままでは駄目だったんだろうか、と思うところもあります。

「僕は振り切ることが大切だと思っています。だからこそ、全精力を投下しても成し遂げられるか、られないか、ギリギリという勝負に新しく挑みたいと思ったんです。幸いというか、今は家庭を持っているわけではないですし、長男なんですけど親からはどこへ行ってもいいと言われています。

――たとえば、本田圭佑選手(メルボルン・ビクトリー)は以前、現役選手だからこそ提供できる価値がある、というようなことを言っていました。でもその一方で、若いからこそ踏み出せることもあるということですか?

「今プロサッカー選手を辞めても、一人で生きていくだけのお金は稼いでいけるだろうという自信もあります。だからこそ、25歳からの数年間は何かを死ぬ気でやりたいと思いました。もちろんプロサッカー選手でありながらできることもありますけど、それだと何をするにもサイドプロジェクトにしかなりえない。サイドプロジェクトのまま、そこそこの努力で成し遂げられることが、果たして本当に面白いのか、と考えました。それが僕の生き死にを懸けた勝負になるか、と言われると全くそんなことはない。プロサッカー選手でいるということは地位も名誉もあるし、応援してくれるサポーターもいて、精神的に余裕がある状態です。でも、これからはサポーターがまたゼロになる。『Jリーガー』というラベルが剥がれた時にこそ『井筒は何者なんだ』と真価が問われる。そんな勝負がしたいんです」

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