名波浩や中村俊輔が躍動 トルシエの評価を高めた攻撃サッカーと2度目のアジア杯優勝
決勝のサウジ戦は耐えて1-0勝利、川口がファインセーブ連発
日本は準々決勝でもイラクを4-1で一蹴。だが準決勝の中国戦は、優勝した8年前と同じくシーソーゲームを強いられた。ボラ・ミルティノビッチ監督が指揮する中国とは同年3月に神戸で0-0と引き分けており、それがトルシエの評価を落とす一因にもなっていた。
ゲームの入り方は悪くなかった。前半21分には中村のサイドチェンジから、右に開いてフリーで受けた高原がライナー性のクロスでオウンゴールを誘発。ところが9分後には追いつかれ、後半に入ると明神智和のミスパスを拾われ逆転を許した。
しかし攻撃力に自信を持つ日本は、冷静に反撃する。後半8分、中村のFKがクロスバーを叩くが、跳ね返りを西澤がダイビングヘッドで押し込み同点。同16分にはショートパスを連ねて左から右へと横断し、最後は明神がミスを帳消しにするクリーンシュートを左隅に決めて3-2と試合をひっくり返した。
結局、決勝戦はサウジアラビアとの再戦。ただしサウジは日本に大敗した後に、ミラン・マチャラ監督が更迭され、新体制の下で韓国に競り勝つなど修正が施されていた。
「タフな戦いになる」
トルシエ監督の予想は的中した。日本は序盤にPKを献上。サウジのエース、ファラータのキックは完全にGK川口能活の逆を突く。だが幸運にもゴール左に逸れ、逆に日本は前半29分、中村のクロスを逆サイドから走り込んだ望月重良が合わせて均衡を破る。累積警告の稲本潤一に代わる形でのスタメン起用に応えた。
しかし快進撃を続けてきた日本も、決勝戦だけは劣勢を強いられた。とりわけ後半に入ると、サウジが決定機を連ね、日本の守護神川口が忙しくファインセーブを繰り返す。終了のホイッスルを待ちわびるような試合展開となった。
この優勝でトルシエは絶大な自信を得た。翌年には、今度こそ世界王者に一泡吹かそうとパリへ乗り込む。
「これで勝てば私の銅像が建つだろう」
ところが結果は0-5の大敗。孤軍奮闘で存在感を放ったのは、アジアカップ不在の中田英寿だった。
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(加部 究 / Kiwamu Kabe)
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。