世界最高峰の“二大戦術”が激突 プレミア天王山でマンCを奮い立たせたペップの執念

後半27分、厳しい角度から決勝弾を叩き込んだサネ【写真:Getty Images】
後半27分、厳しい角度から決勝弾を叩き込んだサネ【写真:Getty Images】

「負けたら終わり」の状況がマンCの選手を奮い立たせる

「このチームを本当に誇りに思う。しかし、それは今日だけのことではない。確かに(12月下旬に)4日間で2敗を喫したが、我々が過去16カ月間にわたり成し遂げたことは忘れてはならない。もしも今日負けていれば終わりだった」

「負けていれば終わりだった」というこのグアルディオラの一言は、世界中のメディアが見出しにした。それも当然だろう。この試合、勝ち、引き分け、負けでリバプールとの勝ち点差がそれぞれ「4」「7」「10」になる状況だった。勝ち点「4」差でさえ、1試合ではひっくり返せない差だ。それが「7」差なら最低3試合、「10」差なら4試合も相手が負けてくれなければ順位は変わらない。逆転にかかる試合数が多ければ多いほど、追いかける側に過剰な忍耐力が求められる。他力本願の状態が長引けば長引くほど、追いかける方に諦めが生じやすくなるのは必然である。

 そんな土壇場に追い込まれて、結局この試合に「負けたら終わりだ」というグアルディオラの思いが選手を奮い立たせた。クロップは「(セルヒオ・)アグエロの先制点、全くアングルがないところから決まった。ウチの場合は決まらなかった」と相手の運を羨んだが、その差はどうして生まれたのか。

 あの角度からゴールを奪うのは至難の業だ。しかし、アグエロは決めた。いや、シュートを打つ以前のオフ・ザ・ボールの動きから、リバプールDFデヤン・ロブレンの死角を突き、ゴールに対する執着と貪欲さが滲み出ていた。それがあのノーアングルから左足を振り抜き、GKアリソンの頭上を高速で越えるゴールにつながった。

 一方、前半18分に訪れたマネのチャンス。この試合で両軍合わせても最高の決定機だった。サラーのスルーパスに飛びつき、ゴール前でGKとの1対1となって放ったシュート。これがなぜポストに当たったのか。決めなくても、リバプールにとって“終わり”ではなかったからではないか。

 そしてゴール前に跳ね返ったボールをイングランド代表DFジョン・ストーンズが慌ててクリアを試みるも、ブラジル代表GKエデルソンに当たってしまい、ボールはゴール方向へと飛んでいく。即座に反応したストーンズが体を投げ出し、ゴールライン上にボール“11ミリ”を残す紙一重のプレーでかき出した。

 さらには1-1の後半27分に生まれた、MFレロイ・サネの決勝弾の完璧さ。左足で左サイドから放つシュートは角度が厳しい。しかもサネは全力で走りこみトップスピードに乗っていた。その刹那に放ったシュートだった。ボールはそこしかないというギリギリのコースを通って、名手アリソンの伸ばした左手をすり抜けると、ファーサイドのポストの内側に当たってゴール内で弾んだ。まさに1センチ単位の精度で決まったゴールだった。

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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