世界最高峰の“二大戦術”が激突 プレミア天王山でマンCを奮い立たせたペップの執念
球際に強い2人のMFを起用、リバプールの中盤に生まれた変化
「この試合はシティにとっても我々にとっても、最高の試合とは言えない。なぜならお互いに困難な状況を作り出したからだ。選手たちには『大丈夫だ』と言った。負けたが、これは起こり得ることだと。もちろん(負けたことは)ナイスではないが、これが最大の問題となるわけではない」
やはり戦前に勝ち点「7」差があったことが、リバプールにとって最大の敗因だったということが、このクロップの言葉から読み取れた。お互いに困難な状況――つまりそれは守備を固めた状況だ。正直、立ち上がりのリバプールは硬かった。とにかくチームがコンパクトにまとまることに集中して、ボールを深追いしなかった。
クロップがこの試合で守備的なマインドに傾いたのは、前節で5-1と大勝を果たしたアーセナル戦の先発から、2人の中盤の選手を外したことでも見て取れた。
まずFWモハメド・サラー、マネ、FWロベルト・フィルミーノの3人に加わる4人目のポイントゲッターとなったMFジェルダン・シャキリを外し、中盤の“潰し屋”と言えるMFジョーダン・ヘンダーソンを起用した。
そして中盤の底から創造性の高いボールを最前線に送るMFファビーニョは、今季プレミア初年度で、イングランドのプレースピードにやや戸惑うシーンもある。特に相手の早い寄せに慌てて、ボールを失う場面が目立っていた。そこでベテランのMFジェームズ・ミルナーが、25歳のブラジル人MFに代わって出場した。フォーメーションも12月の8連勝を支えたサラーを1トップに置く4-2-3-1から、昨季の4-3-3に戻していた。
この筋金入りの球際に強い2人のイングランド人の起用で、確かにバトル能力は上がった。しかし、自慢の3トップへの中盤からの良質なパスは激減し、当然得点チャンスも激減したのである。
一方、DFフィルジル・ファン・ダイクを最前線に残し、同点を目指して試合終盤にパワープレーの波状攻撃を仕掛けたリバプールの追撃をかわして、会見場を訪れたグアルディオラは、体内のすべてのアドレナリンを放出し尽くしたという様子で、勝利者だというのに、その表情にはメランコリックな陰影さえ浮かんでいた。しかしその開口一番の言葉からは、この試合に懸けていた想いの重さと、全力で2-1の勝利をもぎ取った男の達成感が伝わってきた。
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森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。