「前回の悔しさを知っているから…」 快進撃の尚志、7年ぶり4強を導いた連帯感
帝京長岡を1-0で破り、2011年度大会以来2度目の4強進出
福島県代表の尚志が第90回大会(2011年度)以来、7年ぶり2度目のベスト4に駆け上がった。5日に行われた第97回全国高校サッカー選手権準々決勝で帝京長岡(新潟)を1-0で下し、自ら記録した福島県勢としての最高成績に並ぶ準決勝進出を果たした。
1回戦から183センチのフォファナ・マリックとともに、4バックの中央で先発してきたDF黒澤誓哉が累積警告で出場停止。DF馬目裕也も故障でベンチ入りできず、尚志の仲村浩二監督は「台所事情が厳しく、どうやって(帝京長岡のMF)谷内田くんを抑えようかと悩んだ」とやりくりに苦慮した胸の内を明かすと、「大川がよく頑張ってくれたし、後半は3ボランチで対応できた」と、体裁よりも実を取った戦略が成功したことを喜んだ。
前半22分、FW二瓶由嵩が中盤で相手ボールを奪取すると、縦パスを預かったU-17日本代表の2年生FW染野唯月が先制点。これが2試合連続となる決勝点となった。
前半は帝京長岡を上回る6本のシュートを放ったが、後半は相手の9本に対してたったの2本。残り20分近くからは、3回戦まで1度も試していない3ボランチにしたうえ、自陣に引いて敵の猛攻に耐える時間帯がずっと続いた。
前日からこういう展開に陥ることも視野に入れ、実は3ボランチにして守備ラインの前を固める練習をしていた。仲村監督は「上手いサッカーより勝ちにこだわるサッカーをやろう」と選手に訴え、イレブンも本意ではないながら、準決勝と決勝を戦える埼玉スタジアムを目指した。
センターバックに回った本来ボランチのMF大川健主将は、「終盤は押し込まれたが、守備陣と声をかけ合ってしのぎました。スペースを与えるとやられるので、センターバックとボランチの間を空けないようにした」と無失点に封じた要因を振り返る。
大川や二瓶ら今大会に出場した3年生のうち7人が、東福岡(福岡)に0-3で完敗した前回大会1回戦を経験。大川は「負けた日に宿舎へ戻って1、2年生全員でミーティングをしました。何かが足りなかったから負けた。サッカーだけでなく、生活面も改善しようと話し合いました」と神妙に話した。悔しさを胸に足もとを見直したことが、今大会の躍進をもたらしたようだ。
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河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。