日本サッカーを変えたオフトジャパンの快挙 アジア初制覇が生んだ熱狂と他国の警戒心
アジア制覇で生まれた自信とオフトが見つめた“小さな差”
開幕のUAE戦では9000人だった観衆が、決勝を迎えると約5万人に膨れ上がっていた。思えば日本代表戦でスタジアムが埋まる流れは、ここから始まっている。
ホームの利を得た日本は、序盤から終始主導権を握り続けた。前半36分、左からのカズのクロスを受けた高木琢也が胸で止めると、丁寧に左足でゴール右隅へと流し込む。結局これが決勝点となるのだが、大会を通して最も危なげない勝利だった。
ダイナスティカップに続き、アジアカップを制したことで、柱谷主将は「100%を出せば勝てることが分かった」と自信のコメントを残す。だがオフト監督は「今は勝ったが、差はとても小さい」と手綱を引き締めた。
初のアジア王者に輝いたことでサッカーブームに火がつき、翌年のJリーグ開幕へと熱狂は加速していく。ただし急成長を遂げる日本は、他国からもしっかりと警戒されるようになり、その先には“ドーハの悲劇”が待っていた。
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(加部 究 / Kiwamu Kabe)
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。