本田圭佑もつけた星稜の背番号「10」 想いをつないだ“2人のキャプテン”の物語

流通経済大柏に敗れ、3回戦敗退となった星稜【写真:Football ZONE web】
流通経済大柏に敗れ、3回戦敗退となった星稜【写真:Football ZONE web】

流通経済大柏に惜敗の星稜、前半終了間際に起きたキャプテン岩岸の負傷退場

「あとは、任せたぞ」

 担架で運ばれるキャプテンから託された言葉だった。

 星稜(石川)は3日、第97回全国高校サッカー選手権の3回戦で流通経済大柏(千葉)と対戦し、0-1で敗戦。前回大会の準優勝校を相手に健闘するも、あと一歩及ばず、大会を去ることになった。

 試合開始5分でセットプレーから流経大柏に先制点を与えてしまうも、星稜はそこから猛攻を仕掛け、ゴールを脅かし続けていた。なかでもひと際存在感を放っていたのが、キャプテンのFW岩岸宗志と副キャプテンのMF有馬大勢だった。

 岩岸が前線からの激しいプレッシングで相手のミスを誘い、セカンドボールを制して流経大柏を苦しめると、有馬はミドルシュートでバーを叩き、後方からの浮き球に惜しいダイレクトボレーで合わせるなど、立て続けに決定機を演出した。

 しかし、前半終了間際にアクシデントが襲う。岩岸が右サイドからハイプレスに行った際、バランスを崩し肩から転倒。試合はしばらく中断したが、起き上がることができず、負傷交代を余儀なくされた。

 岩岸自身も倒れた瞬間にプレー続行は不可能だと悟っていたようだ。スタッフやチームメートが駆け寄った際、悔し涙を流しながら一言、こう口にしたという。

「大勢にキャプテンマークを巻いてやってくれ」

 10番のFW岩岸と9番のMF有馬――。両者は「ライバルであり、信頼し合える仲間」だったという。星稜の背番号「10」は、偉大なOBである本田圭佑も身につけたエースナンバー。今夏のインターハイでは有馬がその番号をつけていたが、選手権では岩岸に譲ることになった。

 有馬は本田と同じレフティーであり、この一戦でも幾度となくその左足からゴールを脅かしていた。背番号「10」への思いは当然強かった。だが、岩岸が背負うのであればと、キャプテンを支える姿勢を貫いた。

 そのなかで迎えた流経大柏戦。負傷退場の岩岸から有馬へ、冒頭の一言とともにキャプテンマークが渡された。

「必ず、勝つから」

 有馬は最後に岩岸へそう告げると、ピッチを去る友に背を向け、「あいつの分もやるぞ」とチームメート全員で士気を高めた。

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