王者を破った奇策と“遊び心” 尚志が7年ぶり選手権8強「福島県は元気だと示したい」

第97回全国高校サッカー選手権の8強入りを決めた尚志(福島)【写真:Football ZONE web】
第97回全国高校サッカー選手権の8強入りを決めた尚志(福島)【写真:Football ZONE web】

前橋育英に沼田と染野のゴールで2-1と勝利、準々決勝に進出

 前回王者の前橋育英(群馬)を2-1で撃破し、第97回全国高校サッカー選手権の8強入りを決めた尚志(福島)の仲村浩二監督は、「サッカーで福島県は元気だと示したかった」との言葉を残した。

 互いにやや様子を見た感のあった前半だったが、仲村監督は「やっぱり勝ち方を知っているチーム。試合の入り方が上手く、なんとか失点ゼロでハーフタイムに帰ってきてくれと」と、祈るような思いでピッチを見つめていたという。そのとおりに0-0でハーフタイムを迎えると、後半の頭から「普段は一度もやらせたことがない」というDF高橋海大のFW起用という勝負に出た。
 
 それが実るまでにはわずか4分しかかからなかった。投入された高橋がペナルティーエリアわずか外の右45度の位置でFKを獲得すると、DF沼田皇海が直接ニアサイドに蹴り込んで先制。さらに2分後には、右サイドをMF加瀬直輝が2人の間を割るドリブルで突破すると、FW染野唯月が蹴り込んで追加点を挙げた。

 この時、仲村監督はライン際から加瀬に「遊べ!」と大きな檄を飛ばしたのだという。クロスを上げなければいけないとプレーが小さくなっていたテクニシャンに懸けた声は、「試合後に本人から『聞こえました』と。本当に嬉しかった」という指導者としての喜びにつながった。

 尚志がベスト8に進出するのは第90回大会(2011年度)以来。この時は東日本大震災が起きてから約10カ月の大会で、サプライズとともに福島県に希望を与えた。仲村監督は、昨年夏に使用が再開された福島県のトレーニング施設「Jヴィレッジ」の協力が大きかったと話す。

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