日本代表DF吉田麻也が得た幸運 “クロップ流”で磨かれる世界レベルの強度

現在チームを率いるラルフ・ハーゼンヒュッテル新監督【写真:Getty Images】
現在チームを率いるラルフ・ハーゼンヒュッテル新監督【写真:Getty Images】

監督交代で状況は好転「フィジカル的にこのきつさに慣れないと…」

 ところがそんな吉田のやる気も虚しく、W杯に出場しなかったことでクラブに居残った選手を可愛がる形で、ヒューズ監督は吉田を干した。センターバックの陣容の中では吉田がサウサンプトンでのキャリアが最長で、年齢的にも、またクラブの副主将も務めるなど人間的にも最終ラインのリーダーに最もふさわしいにもかかわらず、吉田は開幕から7試合もリーグ戦に出場しなかった。

 それでも、チームとしての結果がついてくればいい。しかしヒューズが率いるサウサンプトンは迷走した。バーンリーとの開幕戦は0-0で引き分けたが、その後はエバートンとレスターに2連敗。第4節でクリスタルパレスに2-0と勝って初白星を挙げたが、その後、解任されるまでの公式戦12試合の結果は7分5敗の未勝利(PK戦は引き分けで計算)。チームは降格圏にどっぷりとはまってしまった。

 低迷の要因として真っ先に上げられるのが、最終ラインのシステムとメンバーが安定しなかったことだろう。3バックと4バックをコロコロと入れ替えた。本来であればセンターバックにはより良いコンビネーションとリーダーシップの存在を求め、1日も早くメンバーを固定するのが定石だが、これが猫の目のように入れ替わった。冒頭に記したシティ戦後の吉田の談話は、そんなヒューズの混迷ぶりを象徴するものだった。

 しかしハーゼンヒュッテル新監督のホームお披露目となったアーセナル戦で歴史的勝利をつかむと、日本代表主将の言葉も大きく様変わりした。

「(前監督との)大きな違いは運動量とプレス。(新監督になってから)とにかくプレスの練習ばかりだった。今後は、特に連戦のなかで、このインテンシティー(強度)を続けられるかどうかが鍵になるのではないかと思う。今までそういう練習をしてこなかったし、そういうサッカーをしてこなかったので、そういう(新監督の)サッカーに心も体もアジャストしないといけない。

 フィジカル的に、このきつさに慣れること。それに精神的にも(プレス戦術を)理解して、体が自動的に動かせられるようにしないといけない。その強度に耐えられるようにしないといけない。これからかなと思うけど、とりあえず新しいことをこうやってタフな練習もして、すぐに結果が出たのは大きいかなと思う」

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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