日本代表DF吉田麻也が得た幸運 “クロップ流”で磨かれる世界レベルの強度

近年のプレミアで問題視される「監督メリーゴーランド現象」

 もちろん“ペップ”ことグアルディオラは、現時点で世界最高峰の監督である。その頂上にいる指揮官との比較は酷かもしれないが、この吉田のコメントから伝わってきたのは、当時のチームを率いていたヒューズ前監督の無策ぶりだ。

 クオリティーで勝る相手に“はまらない戦術”を繰り出し、選手を鼓舞して相手を凌駕する走りも見せることができなかった。それなら大敗も致し方ない――。言葉を選んでいたが、吉田のコメントからはそんな悔しさが滲み出ていた。

 最近のプレミアリーグで問題視されることの一つに、「監督メリーゴーランド現象」がある。シーズン中に同じようなレベルのクラブの監督が、これもまた同等の実績の監督で次々と入れ替わることを指す。数人の代わり映えしないメンバーで、まさにメリーゴーランドに乗っているかのように、ぐるぐると監督の椅子を回すのだ。

 監督を代えるということは、チームが上手くいっていない何よりもの証拠だが、そういうクラブの経営陣は大抵、新しい人材を試すという開拓精神にも乏しい。監督人事は保守的になりがちで、特に残留争いに巻き込まれたチームにその傾向が強く現れる。

 そもそも負けが込んでいるクラブに“今が旬”という監督を招聘するのも難しい。そこで過去に、そこそこの実績がある監督を連れてくる。実名を挙げるとサム・アラダイス、アラン・パーデュー、デイビッド・モイーズ、そして最近のラファエル・ベニテス(ニューカッスル監督)、また今季のウェストハムを率いるマヌエル・ペジェグリーニも、この「監督メリーゴーランド」の新たな一員になったと言って差し支えないだろう。

 マーク・ヒューズも紛れもなくその一人である。マウリシオ・ポチェッティーノ、ロナルド・クーマンが成功して、その後もクロード・ピュエル、マウリシオ・ペジェグリーノとイングランドで実績のない監督を続けて招聘したサウサンプトンだったが、最後のアルゼンチン人青年監督が昨季深刻な残留争いに巻き込まれたため、急きょ“メリーゴーランド”に加わった。アラダイスやパーデューも噂に上がったが、最終的にヒューズに決まったのは、現役時代にサウサンプトンでプレーをしたOBであったことも大きかったのではないか。

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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