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好きこそモノの上手なれ めぐが巡るスペイン育成ダイアリー Vol.2 「スペイン流トレーニングの真実」
タイトルよりも育成
そして、迎えた前日練習後、バルサ戦に向けてどのような声をかけたか、ロベルトにたずねた。返ってきたのは意外な答えだった。
「何も言わないよ。言わなくても分かってるから。彼らは毎年戦っているしね」
またトレーニング中の選手の緊張感について聞くと、「やっぱり細かいところに出ている。集中力だったり、例えば普段は楽しみながらやるロンド(アップで行うボール回し)をしているときも、今週はインテンシティーが高かった」と振り返った。
彼ら選手にとってバルサ戦は、自然と気持ちが沸き立つ一戦なのだろう。それに対して、ロベルトの監督としてのスタンスは全く違っていた。この開幕から二試合目でいきなり迎える大一番に触れ、こう語った。
「1つの試合でしかない。そしてスケジュールは触れることができないもの。毎週、毎週積み上げて良いチームにしていって、勝ち点3を取っていくのみだ」
その理由は、ロベルトたちエスパニョールの指導者たちが根幹に置く目標にあるのだと思う。ロベルトはその目標は「選手を育てることだ」と言いきり、さらに口を動かした。
「このフベニールB(高校1年生チーム)を出たときに、サテライトのエスパニョールBだったりフベニールA(高校2・3年生チーム)に上がることが大切。リーガ優勝とかはあくまでもプレミアムだよ」
昨シーズン、初めてエスパニョールでこの年代を率いたロベルトは9年ぶりにリーグ戦とカップ戦の二冠を達成した。だが、それはあくまでもご褒美に過ぎないというのだ。毎日、毎週のトレーニングで地に足をつけて力を身につけていくことが育成の現場においては最も重要なことなのだろう。だからこそ、彼らは昨季、2つのタイトルを獲得できたのかもしれない。
さていよいよ、バルサ戦。特別な緊張感の走るバルセロナダービーの様子を、次回で詳しくお伝えします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
アディオス!
小堺マシアめぐみ●文 text by Megumi Macia Kozakai
写真提供:Megumi Kozakai