伝統の高校選手権と変わらぬ光景 “強いチーム”が称賛され進まない「選手育成」の現実
強いチームが必要以上に権威づけられ、補欠が増える
もちろん、97年間の歴史をすべて否定するつもりはない。高校選手権がサッカー少年たちのモチベーションを保つのに重要な役割を果たし、普及には不可欠だった時期もある。だが「目先の勝利」より年代に適した指導を意識し全体像を完成させていくことを奨励するJFAの主導力はあまりに脆弱で、落差の大きな現場は治外法権のように放置されたままだ。むしろ小学生の全国大会もテレビ放映され、勝った「チーム」が称賛される気運は高まっている。
強いチームが必要以上に権威づけられ、そこに選手が集まり潤うなら、目先の結果至上主義は促進され補欠が増える。しかし、出場機会を得られず挫折して逃げ道も見つけられない選手たちは、本当に自業自得なのだろうか。
日本代表もJリーグの代表も、世界に出て見事な戦いを見せた。だが頂点の右肩上がりは、育成の基盤が整わない限り続かない。表看板の充実の裏で、実はJFAが取り組むべき課題は山積なのだが、残念ながら変革の兆しは見えてこない。
[ftp_del]
>>【PR】Jリーグの選手が欧州注目試合を特別解説!|DAZN年末プログラムが見逃せない!
[/ftp_del]
(加部 究 / Kiwamu Kabe)
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。