日本はなぜギリシャを崩せなかったのか 10人の集団のほうが強さを発揮するという皮肉
一方、日本代表は香川に代えて、大久保を右サイドハーフでスタメン起用。香川のポジションである左サイドハーフには岡崎を配置した。ザッケローニ監督はこの采配を「戦術的な理由」と説明。中央へ入って行く香川よりも、サイドでのプレーを重視させ、ギリシャの守備スペースを広げる戦術を選択した。また、ディフェンスラインでは今野が左センターバックに復帰している。
大まかな試合の流れとして、前半は日本のゲーム、後半はギリシャのゲームとして推移した。少し不可解にも思えるだろう。前半38分にカツラニスが2枚目のイエローカードで退場したことを考えれば、むしろ、後半こそが日本のゲームになるべきではないかと。
しかし、試合後に長谷部、内田、長友など多くの選手がカツラニスの退場について「むしろ嫌だった」と答えたように、10人になったギリシャは、この試合の目標を勝ち点1に修正した。ハッキリと守備を固め、ひたすら時間をつぶし、日本に付け入る隙を与えなかった。ちぐはぐなプレーが散見された11人のギリシャよりも、10人のほうが集団の強さを増すというのは何とも皮肉な話だ。
戦術的には、日本の狙いはよく発揮されていた。前半、攻撃の展開を左サイドに絞り、スペースをコンパクトにした中で、日本の特長を生かすことに成功した。前半19分には右へのサイドチェンジを受け取った内田から、中央に入った大久保へパス。シンプルなポストプレーから大迫勇也が左足でシュートを打ったが、GKカルネジスがセーブ。21分には左サイドからの縦パスを受け取った大迫が、一度ボールを失いかけるも、粘って前を向き、ファーポストをねらったインカーブシュート。しかしボールは曲がりきらず、枠を外れた。33分には左サイドで本田圭佑のポストプレーから抜け出した長友がクロスを送り、大久保がヘディングで合わせるも、枠の上へ。
日本が左サイドに絞って押し込んだことで、「ギリシャのメッシ」は守備対応の甘さばかりが目立ち、右サイドバックのトロシディスも守備に追われ、攻撃に加わる機会が激減した。これは前半、日本がうまく試合を進めたポイントと言える。
一方、ギリシャのカウンターを受けるシーンもいくつかあった。ダブルボランチの山口、長谷部の双方が左サイドに寄っていたため、前半10分には、がら空きになった中央をコネにドリブルで持ち込まれてシュートへ。また、右サイドハーフの大久保が頻繁に中央に入るため、ギリシャの左サイドバック、ホレバスをフリーにすることが多く、22分の単独ドリブル突破など、このサイドからの仕掛けも危険な匂いを発していた。そして最大のピンチは40分。日本のコーナーキックが跳ね返されたところで、相手を背負った長友が中途半端なクリア。これを拾われてカウンターを食らうと、最後はトロシディスがシュートへ。1度目は今野がブロックし、2度目は川島がセーブした。