中島と堂安、プレミア移籍の信憑性は? 噂の2クラブを記者が直撃、感じた“温度差”
岡崎の移籍取材時にレスターを率いていたピアソンが見せた反応
それに一般的に監督が他クラブに所属している選手について語ることは、決して好ましいものではない。特にビッグクラブが中堅以下のクラブで活躍するスター選手について言及すると、その選手の所属クラブに対する集中力と忠誠心を乱すケースも多い。
しかしそれでも、監督と報道陣の間には多少の阿吽の呼吸はある。筆者の経験上、獲得に色気がある場合は、ここまで素っ気ない返答はしないものだ。
例えば、2015年夏に実現した岡崎慎司のレスター移籍。筆者は同年5月、当時のレスター監督であるナイジェル・ピアソンの定例会見に出かけ、取材した。
その時、ピアソンは「会見の席では言えない。こういう場では移籍の話をしないのが私のモットーだ」と語ったが、会見後に筆者を手招きし、オフレコを条件に1対1で取材に応じてくれた。そして「今はまだ書くなよ」と前置きすると、「岡崎には興味がある。プレミアでもやれるはずだ」と内密に教えてくれた。
ただし、それは11年に阿部勇樹(現・浦和レッズ)がレスターに所属していたおかげで、ピアソンに一度だけ1対1のインタビューをしており、彼も筆者の顔を覚えていてくれた。そして私がこの取材のためだけに、日本から来たと勘違いしてくれた幸運があった。
話を終えた後、ピアソンから「わざわざ日本から来て、手ぶらで帰らせたのでは気の毒だ」と言われて、英国在住だと教えたら「やられた!」と呟いて破顔一笑された。
もちろん、このピアソンの件は僥倖(ぎょうこう)とも言える例ではある。しかし、それにしても今回のエスピリート・サント監督の対応は冷淡だった。もしもこれが演技だったとしたら、古くて陳腐な表現で申し訳ないが、“アカデミー賞ものの名演技”である。
それに加えて地元記者が、全く中島獲得に関して知らなかったというのもマイナス材料だろう。こちらが中島の移籍について尋ねると「全く知らない。どんな選手だ?」と逆取材してくる始末。クラブに有力な情報ソースがあるはずの地元紙が全くマークしていないということは、ウォルバーハンプトン側に中島獲得の動きがないという証拠にもなる。
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森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。