鹿島がレアルに本気で挑み見えたもの 涙の19歳安部が体感した「プレー強度の差」

“アスリートとしての差”を再認識したDF内田【写真:Getty Images】
“アスリートとしての差”を再認識したDF内田【写真:Getty Images】

経験豊富な内田も“アスリートとしての差”を再認識 「疲れてからも判断が狂わない」

 さらに安部は「(途中から)ちょっと差がきつくなって、1個(鹿島の)ラインが下がったように感じました。立ち上がりの20分までのようなプレーを90分は続けられないなというのは、分かっていましたけど」と振り返る。

 要するにレアル側が平常運転、もしかしたら試運転くらいでやっているゲーム序盤のプレーに合わせて、上回ろうと知らず知らずのうちにオーバースペックの強度となり、さらに時間が経つにつれて強度は上がり、現在の鹿島の選手たちは体も頭も“キャパオーバー”になってしまったということかもしれない。

 バヒド・ハリルホジッチ元監督時代の日本代表合宿で、普段よりかなり強度を上げて20分くらいのミニゲームを行っていたことがあった。そこで当時のキャプテンだった長谷部誠(フランクフルト)は、「強度の高い練習でしたが、これを90分は無理でも25分、30分と伸ばしていく必要がある」と語っていたのが、強く記憶に残っている。

 その練習では代表選手たちがあえて自分たちの平常運転より強度を上げることで心身に負荷をかけたわけだが、今回のような明らかに“格上”のチームと真っ向勝負をすると、スタートから自分たちの平常運転を超えた強度でプレーする必要が出てきて、時間とともに相手との差が表れるという現象になる傾向があるのかもしれない。

 また後半から出場した内田篤人は、「アスリートとしての差っていうのもあるのかなと。疲れてからも動ける、あれだけ判断が狂わない。まあ、それはもうだいぶ前に(シャルケで)感じたこと」と語る。持っている強度のスペックの関係で、疲労の度合いがそもそも違うことに加えて、レアルのようなチームは多少疲労してきてからもプレー強度が落ちない選手たちの集団であるということだ。

「インテンシティー」とも呼ばれる試合の「強度」は、パスのスピード、正確性、運動量、全体のコンパクトさ、当たりの強さなど総合的なパフォーマンスを表す指標のようなもので、分かりやすくデータによって計測できるものではないが、両チームの差を走行距離やボールポゼッション、パス数、シュート数などから想定することは可能だ。

 後半になってリードしているレアルのほうが、シュート数が増えていったというのは両チームの強度に差が出ていったことを示す一つのデータだ。鹿島としては今回の戦い方をしたら、ほぼ確実に後半はまともなサッカーにならないくらいの差になることは明白だが、仮に前半の早い時間にリードを奪って、そこから引いてしまうといったプランがあるならば、勝機が全くなかったわけではないはずだ。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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