旧ユーゴの悲惨な歴史の目撃者

　ACミランのシニシャ・ミハイロビッチ監督は、インテルのロベルト・マンチーニ監督に“おとこ気”あふれる提案を行った。13日のインテルとのミラノダービーで勝ったチームが、欧州に続々と流入する難民の問題に支援金を供出するように持ち掛けたのだ。指揮官は、長らく内戦が続いた祖国である旧ユーゴスラビアの難民支援を続けてきた。そうした経験から今回の行動に移し、イタリア地元紙「ガゼッタ・デロ・スポルト」に公開書簡を送った。
「ダービーまであと2日。ミハイロビッチはマンチーニに呼びかける、心の挑戦。勝った者は払う」
　こう見出しで特集されている。鬼軍曹と呼ばれるセルビア人指揮官は、全世界的な社会問題となっている難民問題に自身の体験から心を痛めていた。
「何年も存在していた劇的な事実が、ここ数日、深刻化してきた。この移民の問題についてのことだ。多くの男性、女性、そして、子供たちが戦争、大量殺りく、貧困から絶望してヨーロッパに逃げてきている。それは特に私の心を痛める問題だ。なぜなら自分の国で、自分がこの目で見て来たことだから。旧ユーゴスラビアでの戦争時、私の両親も私の親戚たちも戦争から逃れて移民した」
　旧ユーゴは、流血の内戦と分裂を繰り返した。家族の悲惨な体験を振り返り、重い言葉をつなぐ。指揮官自身も私費を投じて、これまで母国の難民に手を差し伸べてきたという。
「私はできるかぎり、一度も見たことがない人たちも助けてきた。彼らの名前はもう覚えていない。でも、彼らの奥深い苦しみに染まった目はよく覚えている。その目が多くを物語っていた。絶望の中で批判できる場所を探して、逃げてきている。家族も全て根こそぎはぎ取られた50歳や60歳から、もう一度人生をやり直すということがどんなに難しいことか、私にも分かっている。政治的な議論はしたくない。私はただサッカーの監督でありたい」