岡崎慎司、日本代表への尽きない情熱 レスターの”1トップ”で示した稀有な才能
岡崎の努力を怠らない偉大な精神 「試合に出られない時こそチャンス」
「(9月25日に行われた)ウォルバーハンプトンとのリーグカップで、(先発して)無難にやれていると思っていたなか、60分で交代させられました。点が取れないからです。その時に『自分は前が向けなくなっている』と改めて思いました。試合に出られないというのは、ある意味、そこで自分を変えるチャンスでもあるじゃないですか。そこからシュート練習に没頭しました。(練習場で)繰り返し、繰り返しシュートを打ち、今までは(ヴァーディへのつなぎ役を意識しすぎて)空いていたスペースでボールを受けていたのを、裏に抜けて受けて、シュート意識を高めるようにした。その動きも練習で繰り返した。そうしたら(このブライトン戦での1トップ先発という)チャンスがもらえたのかな」
なんという、ひたむきさなのだろう。しかし、これが岡崎の偉大さの原点である。とにかく努力を怠らないのだ。常に進歩を考えている。自分はこれでいい、これで満足だという驕りが全くない。
普通、試合に出られない選手は不安に苛まれる。または不安や怒りを蓄積させ、そうした選手はチームの火種にもなることさえある。現在の欧州トップリーグでこうした選手の精神面の管理は非常に難しい。選手側とすればプロとしての生活、いや人生が懸かっている問題だ。試合に出場する、しないで選手生命が決まる。
ところが岡崎は試合に出場していない時こそ、「自分を変えるチャンスだ」と語る。よく聞くフレーズではあるが、こんなふうに常にサッカーと真摯に向き合える選手が、一体どれほどいるのだろうか。
レスターで取材したこの3年4カ月を振り返り、その試合後に岡崎がこれまで語った言葉を思い起こせば、174センチの小さなFWは、常に「進歩したい」という強い思いに駆られ、強迫観念のような自問自答を繰り返して今の立場を築き上げてきた選手だということが言える。
2015年夏、夢だったプレミア移籍を実現させ、降格争いをするつもりでやってきたレスターがシーズン半ばであっという間に優勝争いをするチームに突然変異した。
そこで岡崎は初年度でレギュラーを勝ち取るため、自分自身のゴールより、チームに不可欠なピースになることを優先した。
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森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。