新時代の「3-4-3」が誕生? マンCの“偽SB”や“ハーフスペース”を封じたリヨンの守備
ボランチ横の“弱点”をカバーした守備時の連動した動き
まず、自陣深くでボランチ横のスペースに入られたケースでは、3バックの一人が前へ出て対処した。シティは左インサイドハーフのダビド・シルバ、左ウイングのレロイ・サネによる連係を使った崩しを得意としているが、シルバにパスが入った時点で3バック右のジェイソン・デナイヤーが前進して止める(図3-1)。
さらにボランチのタンギ・エンドンベレが局面に加わって、シティのアタッカーをサイドへ封じ込める(図3-2)。5バックの横スライドなので、サネのドリブルに対しても、シルバのインナーラップに対しても分厚く守れていた。
もう一つ、シティのサイドバックが中へ寄らずに外へ開けば、フリーでパスを受けて攻撃の起点になることができるのだが、それはシティにとってあまり都合が良くない。例えば、シティの左サイドバックを務めたオレクサンドル・ジンチェンコは、エンドンベレの横に空いているスペースでパスを受けることはできる(図4-1)。
しかし、実際にはコルネがジンチェンコをマークするので、ここで受けてしまうとサネへパスを送ることが難しい(図4-2)。そもそもシティが「偽サイドバック」を使っているのは、ウイングへボールを供給したいからであって、自らウイングへパスが入りにくい形は作りたくない。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。