アラベスがJ2昇格の鹿児島と提携した理由 来日したCEOに密着、見えてきた狙いとは?

鹿児島のトレーニング環境を視察したアリツCEO【写真:Football ZONE web】
鹿児島のトレーニング環境を視察したアリツCEO【写真:Football ZONE web】

鹿児島のトレーニング環境も視察「いつの日か自前の練習場を…」

 翌26日に行われた鹿児島とのミーティングで、彼らが作り上げた“オリジナル”なシステム、「BALシステム」のプレゼンテーションが行われた。選手の育成、スカウティング、チーム状況、指導者の評価、あらゆるものがデータ化されデータベースに収められていた。その詳細な項目の数々、解釈、実践的な落とし込み――。アリツCEOが語ってくれた「細かいところまで気を遣って、時間を使って一生懸命働くこと、それをずっと続けること」を目の当たりにすることができた。

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「鹿児島のトレーニング環境が見たい!」

 これが彼らの次のリクエストだった。ホテルから約30分車を走らせ、鹿児島が転々とする練習場の一つ、鹿児島ふれあいスポーツランドに向かった。ここは、県が所有するグランドと市が所有するグランドが同じ施設の中に隣り合わせになっている。1~2月のキャンプシーズンには清水エスパルスが市の持ち物であるグラウンドを使い、松本山雅FCが県の所有するグラウンドを使う。ホームタウンの鹿児島は、その間の期間を縫うような形で使用することになる。

 シーズン中も一般開放や芝生のメンテナンスなど様々な理由で使用頻度は制限される。せっかくの素晴らしい環境をアドバンテージに使えない鹿児島の現状を心配しながらも、アリツCEOは「J2に上がったんだ。地道に自治体を説得し、使用頻度を増やしてもらおう。いつの日か自前の練習場を持つまでね。我々だって最初はそんなもんだったよ」と言って笑った。

 27日朝、桜島が噴火し、真っ黒な噴煙が舞い上がった。鹿児島空港に降り立ったばかりのスペイン人の彼らが最初に話してきたのが、雄大な桜島の美しさについてだった。彼らの滞在中何度も「SAKURAJIMA」「Volcano」(火山)という言葉が飛び出した。鹿児島という美しい県の象徴は、桜島という今も活発に活動している火山だ。そして今回、新たなシンボルが誕生した。

 J2昇格を決めた鹿児島ユナイテッドFCは、県民の夢を乗せて来季、1カテゴリー上の舞台に戦いの舞台を移す。しかし、その舞台は鹿児島の終着点ではない。J1、アジア王座、そしていつの日か世界の舞台でアラベスと一戦まみえるためのスタート地点だ。

「さあ、ビトリアに戻ったら忙しくなるぞ」

 そう言ってアリツCEOは機内へと向かった。それは次節、アラベスがホームで対戦するセビージャ戦に向けた準備のことではない。鹿児島との未来を作り上げるための準備だ。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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