描く逆転のシナリオ 世界一の健全経営を誇るブンデスリーガの海外戦略とは【前編】

危機感を抱く海外放映権料収入の低さ

 ブンデスリーガの海外戦略における出遅れは、海外放映権料に如実に反映されている。昨季のブンデスリーガの海外放映権料は約7200万ユーロ。プレミアリーグの5億6200万ユーロは別格としても、リーガ・エスパニョーラの1億5000万ユーロ、セリエAの1億1700万ユーロをも下回っている。ブンデスリーガの海外放映権は、財政危機に苦しむセリエAにさえ及ばないというのが現状なのだ。
 
 リーグ関係者内でもこの状況に対する危機意識が強く、ブンデスリーガのマーケ ティング責任者であるヨルク・ダウビッツァー氏も「われわれは近いうちに、少なくともセリエAのレベルにまで到達しなければならない」と語っている。
 
 とはいえ、ブンデスリーガの海外放映権料は右肩上がりに成長を続けている。放映エリアは今やFIFAに加盟している全209の国と地域にまで拡大し、パッケージ販売が始まった04-05シーズンからの10年間で、5.8倍にまで増加した。売上高についても、3年ごとの契約更新で50%以上の成長を達成しており、新しく契約が結ばれる来季にも大幅な成長が見込まれている。
 つい最近も、インドを含む南アジア6カ国と新たな放映権契約を結んだと報じられた。この契約には従来のテレビ放映だけではなく、インターネットやモバイル端末での視聴も含まれて おり、こうしたインターネット分野が新たなフロンティアとして期待されている。
 また、独自に工夫を行っているクラブもある。昨冬、中国人MF張稀哲を獲得し、先日には中国語版サイトをオープンさせるなど、中国展開に熱意を見せるボルフスブルクだ。彼らは従来のようにメーンスタンド側から試合映像を撮影するだけでなく、バックスタンド側からも試合を撮影して海外で放映することで、メーンスタンド側に設置した看板を海外向けの広告枠として販売している。

【後編に続く】

山口裕平=文
text by Yuhei Yamaguchi
ゲッティイメージズ=写真
photo by Gettyimages

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