描く逆転のシナリオ 世界一の健全経営を誇るブンデスリーガの海外戦略とは【前編】
後れを取ったブンデスリーガ
世界一の健全経営を誇るブンデスリーガ。その経営手法や戦略が、世界中の耳目を集めているといっても過言ではない。だがそんな彼らでも、他国でも後塵(こうじん)を拝している分野がある。今、ブンデスリーガが精力的に推し進めている海外戦略とは――。
2013-14シーズン、ブンデスリーガ1部全体の売り上げが、前季比12.9%増の24.5億ユーロを記録し、10年連続での更新となった。また売上高人件費率は、欧州平均の65%を大きく下回る36.8%に収まっており、世界でも有数の健全経営が達成されているリーグといえる。競技面での成長も著しく、欧 州サッカー連盟(UEFA)国別ランキングにおいては、今季にはプレミアリーグを抜いて2位となることが決まっている。ファイナンシャル・フェアプレーの導入により今後、他国リーグの奔放な経営が抑制されていけば、今後さらにその存在感は高まっていくことになるだろう。
しかし、そんなブンデスリーガにも、経営面で出遅れている分野がある。それは、海外戦略だ。実はブンデスリーガの海外に占める売上高は、04年までほとんどなかった。
世界中で高い人気を誇るプレミアリーグやリーガ・エスパニョーラと比較して、後れを取った感は否めない。例えば、世界各国におけるレプリカシャツの販売数を見ても、ブンデスリーガはプレミアリーグ、リーガ・エスパニョーラに次ぐ3位となっている 。
サッカー界においても、今後さらに激しさが増していくと予想される国際競争に打ち勝つためには、これまで以上にプレゼンスを高め、ブンデスリーガという商品の価値を向上させることが必要になってくる。
その役割を担うのが、08年に設立されたDFLスポーツエンタープライズ株式会社だ。ブンデスリーガを運営するドイツサッカーリーグ(DFL)の完全子会社で、国内外におけるマーケティング業務を行っており、その業務はオーディオ・ビジュアル権利部門、スポンサー・ライセンス部門、メディア・広告部門の3つに分類されている。
オーディオ・ビジュアル権利部門では主に国外の放映権販売の拡大に向けた業務を、スポンサー・ライセンス部門ではリーグスポンサーの獲得・交渉、 ゲームやトレーディングカードなどの公式ライセンス商品の販売を行い、メディア・広告部門では月に一度の公式マガジン発行やホームページの運営を通したプロモーションを担当している。