Jリーグが挑む「外国籍枠」と「育成」の二大改革 日本特有の“伝統”を変えられるか

(左から)神戸FWポドルスキ、鳥栖FWトーレス、神戸MFイニエスタ、名古屋FWジョー【写真:Getty Images】
(左から)神戸FWポドルスキ、鳥栖FWトーレス、神戸MFイニエスタ、名古屋FWジョー【写真:Getty Images】

外国籍選手の出場枠が「5」に拡大、スター選手補強はさらに活性化するのか

 Jリーグが外国籍選手枠の拡大と、ホームグロウン制度の導入を発表した。

 どちらかと言えば、注目を集めたのは外国籍選手枠のほうだろう。DAZN(ダゾーン)マネーの流入などで、最近ではアンドレス・イニエスタ(ヴィッセル神戸)、フェルナンド・トーレス(サガン鳥栖)、ルーカス・ポドルスキ(ヴィッセル神戸)、ジョー(名古屋グランパス)など一級品の助っ人が加入してきた。しかしイニエスタのレベルのスター選手を5人獲得してきたとしても、それが結果に結びつくとは思えない。むしろ現実的に貢献度が高いのはGKを中心とした韓国勢であり、一部ハングリーなブラジル勢で、掘り出し物として際立つのがタイからやって来たチャナティップである(Jリーグ提携国選手は外国籍選手枠に含まれない)。

 現状でJクラブの大半が、攻守に組織的なハードワークを標榜している。万国共通の原則と言えばそれまでだが、この原則に忠実で勤勉な日本人選手で固めるほうが勝利への近道という見方もできる。例えばFC東京は、おそらく守備力を懸念して久保建英(横浜F・マリノス)を使わなかった。長谷川健太監督は「周りの大人も建英の才能を認めているからカバーに走る」と語ったが、長所と短所が明確なタレントより、総合力が保証された選手の起用を選択した。

 ただし同じ要素はイニエスタも抱えているわけで、神戸が結果を出すためにはイニエスタのプラス面を残すために、余計に汗を流す選手が必要になる。現状で神戸がチームとして結果を残せていない要因だろう。

 こうした状況を見ても、拡大された外国籍選手枠5人を埋めようと躍起になるチームが続出するとは思えない。J1で監督のビジョンに則して、日本人選手を質で上回る助っ人を探してくるのは簡単な作業ではない。またJ2以下なら、予算と質の折り合いをつけるのが一層難しくなるはずだ。

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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